6人組バンド、Qyotoが4枚目のシングル『君に伝えたストーリー』をリリースした。『君に伝えたストーリー』は、あだち充原作の読売テレビ・日本テレビ系TVアニメ『MIX』のエンディングテーマだ。2017年のデビュー以来、彼らが夏に発表したシングルは毎回アニメタイアップとなっている。その魅力をみてみよう。
ポルノ、リトグリらと並んでタイアップに抜擢
Qyotoはその名の通り、京都で結成されたバンドだ。京都市の路上でストリートライブを行っていたボーカルの中園勇樹の歌声に、バイオリン担当のHIROKIが聞き惚れたことがきっかけ。この2人に加え、TSUCHIYA(Gt)、TAKUYA(Ba)、KENSUKE(Dr)、RYOTA.(Key,Sax)の6人からなる。バンドには現役大学生も所属し、若々しい演奏や楽曲がまっすぐに耳に飛び込んでくる。
そんなQyotoの4枚目のシングルが、『君に伝えたストーリー』だ。高く青い空に溶けていくようなコーラス。きらめく夏の日射しのようなギター、グラウンドの土煙を思わせる、力強くて乾いたドラム。『君に伝えたストーリー』を聞いていると、思わずそんな表現が浮かぶ。アニメ『MIX』のエンディングテーマという情報があるからだろうか? それもあるかもしれないが、しかしそれ以上に、彼らのサウンド自体がそんな映像を強く喚起させるのだと感じる。
『MIX』はあだち充が原作の少年マンガだ。もしこの作品を知らなくても、その絵柄を見れば「あっ」と思うかもしれない。『MIX』の主人公・立花投馬の顔つきは、『タッチ』の主人公である上杉達也の顔つきにそっくり。そう、『MIX』はあだち充の国民的アニメ『タッチ』の30年後を描いた作品なのだ。『タッチ』の舞台となった明青学園を舞台に、実力の低迷したこの高校が、再び甲子園を目指すというストーリーになっている。
アニメ版の放送が開始したのは2019年4月。その現在のエンディングを担当しているのがQyotoだが、現在のオープニングはポルノグラフィティだ。また、Qyotoの前にはLittle Glee Monsterがエンディングを担当していた。Qyotoはまだシングルを4枚出しただけの新人バンドだが、こうした錚々たるグループと肩を並べていることから、その実力がうかがいしれる。
普遍的で、イメージを呼び起こすポップな音楽性
Qyotoの楽曲は、これまでにもアニメの主題歌に抜擢されてきた。4枚のシングルのうち、実に3曲がアニメタイアップだ。そのどれもがアニメの世界観にぴったりと寄り添っている。
2017年8月にリリースされた彼らのメジャーデビューシングル『太陽もひとりぼっち』は、水泳の飛び込み競技に挑む高校生たちを描いたアニメ『DIVE!!』のオープニングテーマ曲。
『君に伝えたストーリー』にも通じる美しいコーラスで幕を開け、「教室の隅」「教科書」といった言葉がバンドサウンドの中に散らばる。四つ打ちのリズムが加わり、疾走感を増すサビの展開は、飛び込み競技のダイナミックさともリンクする。
翌年リリースの『It’s all in the game』はテレビ東京系アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のオープニングテーマ。世界的に人気を集めるアニメ『NARUTO』の続編として忍たちが苛烈な戦いを繰り広げる様を、火花が散るような熱い演奏で彩った。
Qyotoの楽曲は、どれもとても普遍的だ。それはポップとも言い換えられるだろう。ポップな音楽の中で、聞いた人の多くが見聞きしたことのある光景を、しっかりとイメージさせてくれる。
彼らは別のインタビューで、目標とするバンドの1つとしてMr.Childrenの名を挙げていた。ミスチルにも、超ポップな音楽性の中で誰もが感じたことのある気持ちをすくい取る大衆性がある。そのポテンシャルをアニメ作品のオープニング、エンディングという方向で発揮しているのが、Qyotoの現在地なのだろう。
また、Qyotoはアニメだけでなくドラマの主題歌も多く手がけていることも付け足しておきたい。他の作品との相乗効果で、Qyotoの音楽は今後より広く知られていくはずだ。
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