中田ヤスタカが宣言通り2017年に入り、ソロ活動を本格始動させている。
近いところでいえば、9月22日の宮城「LUXS SENDAI」から12月22日の東京「ageHa」までを巡る全国DJツアーが予定されているし、カップヌードルチリトマトヌードルのCMに楽曲提供した『White Cube』をSoundCloudでフルサイズ公開したり、「サウンド&レコーディング・マガジン」の表紙を飾ったりと話題は毎月尽きることがない。
今回この記事ではそんな彼の「現在地」を探ってみたいと思う。いったい彼はどこに行こうとしているのだろうか。
フューチャーベースを取り入れだした中田ヤスタカ
まず今年に入り彼がつくり出すサウンド面にかなりの変化が見られている。
前述の新曲『White Cube』では、Wave RacerやLidoなどに代表されるフューチャーベース的なサウンドアプローチが取られている。フューチャーベースは海外や日本のネットレーベルシーンなどでは既にポピュラーな音楽ジャンルだ。一言で形容するのは難しいが、誰もいない真夏のカラフルなプールに入ってたくさんの3Dのイルカと泳いでいるような音といったらいいだろうか…サウンドの特徴として「浮遊感のあるシンセサイザー」「可愛らしいゲーム的な効果音」「808系のビート」などがあげられるが、実際に聴いてもらったほうがより理解が早いと思うのでこちらを。『Flash Drive』はまさに王道のフューチャーベースサウンドといえるものだと思う。
Wave Racer『Flash Drive (feat. B▲by)』 (Official Video)
中田ヤスタカは表紙を飾った「サウンド&レコーディング・マガジン」2017年10月号の中で同ジャンルを「NINTENDO64みたいな音楽」と称している。ちなみに中田ヤスタカが楽曲提供したPerfumeの新曲『If you wanna』もフューチャーベースだ。
Wave Racer『Flash Drive (feat. B▲by)』 (Official Video)
これまでも東京女子流『ミルフィーユ』やSKY-HI『Limo』などメジャーシーンでフューチャーベースサウンドは取り入れられていたが、中田ヤスタカが今回思いっきり力を入れてきたことでより一般的にこのジャンルが浸透していくことになるのかもしれない。
東京女子流『ミルフィーユ “Version Cool”』(Official Video)
SKY-HI 『Limo』 (Official Video)
中田ヤスタカがつくる曲はとにかく「可愛い」。フューチャーベースも「可愛い」音楽ジャンルなので、このクロスオーバーはもはや必然だったといえるだろう。ここからの動きにさらに注目していきたい。
楽曲制作者によりスポットライトが当たるJ-POPシーンへ
続いては、楽曲発表スタイルのお話。まずは以下のインタビューを見てみよう。
――中田さんがソロ名義で発表しようと思ったのは?
中田ヤスタカ:ソロ活動自体もずっとやってきているんですけど、今回のように“ポップスのフィールドで切り取る”ということはあまりしてこなかった。ほんとんどがインストだったので、今年からボーカリストをフィーチャリングしていろいろやっていく、というところです。――そこが一番聞きたかったんです。どうして今、このタイミングでソロ名義で、ボーカルをフィーチャリングゲストとして迎えるポップスを作り始めるのかっていう。中田さんは、きゃりーやPerfumeなど、最先端のポップスシンガーのプロデュースをしてますし、椎名林檎さんやE-girlsなどへも楽曲提供をしてますよね。
中田ヤスタカ:プロデュース側からだとできないことも多いので、どっちもやるという感じですかね。プロデュースや楽曲提供の場合は、そのアーティストの前後の流れもあるし、完全に自由でもない。いい意味でも悪い意味でも、コンセプトは向こう側にあるんですね。そういうものも今まで通りやりつつ、自分の曲を普段なら歌わなそうな人に歌ってもらったりしたいな、と。海外だと普通にやってる人も多いので、僕はそれをもう少し当たり前にやりたいというだけなんです。――日本でそういうスタイルが少ないのはどうしてだと思いますか?
中田ヤスタカ:日本はアーティストが強いですよね。なぜかクリエイターに匿名性を求めている。名前が2つ出てくるのを避けるというか、邪魔だという感覚なのかもしれないですね。ただ、日本でもクラブカルチャーの人やヒップホップの人は普通にやってる。それが、ポップスのフィールドになった瞬間に変わってしまうのが不思議だと思うので、僕はやってみるという感じです。
(引用:中田ヤスタカインタビュー「前例のない新しいルールを敷きたい」)
海外ではSpotifyなどをざっと見ても分かるように、トラックメイカーの名前が表に出て、ボーカリストを(feat.○○)という形で発表している作品は非常に多い。日本ではまだこの形が主流とはいえない状況で、ボーカリストが表舞台に出てトラックメイカーはもはや裏方扱いということも珍しくない。
Charli XCXときゃりーぱみゅぱみゅとのフィーチャリング楽曲『Crazy Crazy』や、米津玄師とのフィーチャリング楽曲『NANIMONO』など、中田ヤスタカは今年に入ってこの形での楽曲発表を積極的に展開しだしている。banvox、tofubeats、TeddyLoidなどトラックメイカーが表に出るケースも日本でかなり目立ってきたがまだまだ十分とはいえない状況、彼がソロ活動を本格化させることによって、楽曲制作者によりスポットライトが当たるJ-POPシーンに今後変わっていくことも考えられるだろう。
中田ヤスタカ『Crazy Crazy (feat. Charli XCX & Kyary Pamyu Pamyu)』(Official Video)
中田ヤスタカ『NANIMONO (feat. 米津玄師)』(Official Video)
Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅを始め数々のアーティストを立て続けにヒットさせてきた彼が次にプロデュースするのは「中田ヤスタカ自身」。何かが起こりそうでとてもわくわくさせられてしまう。常に先を進み続ける彼の今後の活動に要注目です。
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