2017年1月26日、開催された世代もジャンルも異なる多種多様な出演者が一挙に集う、拡大し続けるヒップホップ・カルチャーのいまが詰まったイベント『MUTANT CAMP supported by MUTANT LABEL & MEETIA』!
BASI & THE BASIC BAND / BES / Creepy Nuts (R-指定&DJ松永) / APOLLO / KOPERU & ISSEI feat. 熊井吾郎 / Rude-α / そして渋谷サイファー vs 梅田サイファーのエキシビジョンマッチと幅広い出演者が集ったMUTANT CAMP。
メロウ・ヒップホップからMCバトル、オールドスクール、そしてレゲエにMPCの超クールな生演奏まで詰まった同イベントの模様をお届けしたい。
この日の一組目は、Rude-α!
ちなみに後からTwitterで知ったのだが、この日の会場にはラッパーのGOMESSも来ていたそう。Rude-αを見に来たらしい。
渋谷クラブクアトロに遊びにきたよ。ルードアルファのライブを見るよ。久しぶり。
— GOMESS (@gomessthealien) January 26, 2017
ベース、ドラム、ギター、キーボードの生音バンドが一曲目『夜道を走る』のイントロを奏でると、すかさずスカジャン、ダメージジーンズ、ブーツを着用したRude-αが登場。
ヒップホップでありながらも、必ずしもリリックは固く韻を踏んでいるわけではなく、ソウルやファンクにも相通じるものを感じる。彼がファンであることを公言している韻シストからの影響を感じるステージングでもあった。
二曲目『水平線の向こう』では「皆さん生きてくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。ここに来てくれてありがとう」とMC。
この「ありがとう」という言葉には、彼の人柄や音楽の魅力、沖縄で見てきたもの、東京で出会った人たちへの思いなど色んなものが全て詰まっているように思えた。
1月、沖縄に帰り成人式を迎えたことを報告したRude-α。「おとん、おかあはどんな気持ちで(自分の)名前を付けたのかな。誇れるような大人になれてるのかな」と逡巡、更に成人式を振り返り、「そこで(久しぶりに)会った奴で、今後、もうきっと死ぬまで会わない奴もいるわけですよ」と語った彼。
誰しもが、幼年期、思春期を過ぎれば大人になり、当たり前のように幼いころの友人とは離れ離れになり、「離れ離れに」なることに対して特に深い感慨を抱くこともなくなっていったりするのではないだろうか。
でも、彼は違う。「一期一会」とあっさり片付けてしまいそうな事柄に、全身全霊で向かい合っている。不器用で、愚直であるとも言える。その姿勢を目の当たりにしていると、グラッと感情を揺り動かされるような気持ちになる。
「マジ、新しい時代の波に乗り遅れんなよ?」と会場を煽ると、一気に会場はヒートアップ。全三曲のステージを終えると、「俺のことをチェックしておけば間違いない。MUSIC STATIONで会いましょう」と叫んでみせた。
続けて登場したのは、KOPERU & ISSEI feat. 熊井吾郎。
Rude-αが三曲をそれぞれフルで演奏したのに対して、彼等のステージングは20分弱の持ち時間に、ビートボックスとMPCのソロも含めて全九曲を詰め込んだ、濃厚なノンストップMIXのような構成。
熊井吾郎がMPCをリアルタイムでガンガンに叩き、ISSEIがそこにビートボックスで絡む。二人が絡み合い、作り出すビートに乗せてKOPERUが高速ラップを乗せていく。Beastie Boysを思わせるようなちょっとコミカルな雰囲気もありつつ、単なるオールドスクールの模倣ではない。
MCで「この三人でやるのは初めてでございます!」と述べたISSEI。ぶっちゃけ見ごたえがありすぎて、とてもではないけれど初の三人でのステージとは思えなかったし、この三人で、何回でもライブして欲しいという気持ちにさせられた。
またISSEIは主宰らしく、MUTANT CAMPについてもコメント。MUTANT LABELをやっており、音楽活動の傍らで服や映像を作ってきた集大成であると述べ、この後に続くステージへの期待感を高めてみせた。
ステージの転換時から観客の熱い目線が壇上に注がれ、注目度の高さを感じさせたのがCreepy Nuts (R-指定&DJ松永)。
普段は三十分から四十分程度のライブを「べらべら喋りながらやる」ことが多いというCreepy Nuts。しかし、今回のMUTANT CAMPの一アーティスト辺りの持ち時間は二十分弱。
その結果、どうなったかと言うと……一曲目から『助演男優賞』!
更に『爆ぜろ』『合法的トビ方ノススメ』と続く、超アゲアゲなライブに!
『合法的トビ方ノススメ』の冒頭ではR-指定がマイクに向かって「✕✕(※昨年12月、違法薬物使用疑惑で突然の芸能界引退を発表した人物の名前)」と囁き、会場は合法的に飛ぶことの重要性を再認識。極めて健全、ヘルシーな空気が会場を覆った。
KOPERU & ISSEI feat. 熊井吾郎のKOPERUと、元々コッペパンといグループを組んでいたR-指定。MCでは渋谷クアトロでコッペパンとしてライブをした時のことを振り返り、「(今日まで)続けてきてよかった」と語った。
『フリースタイルダンジョン』、フリースタイルのブームについても言及し、「俺は同じことをやってきただけ」と語った彼。いままで(フリースタイルに)見向きもしなかった同業者によるバトルへの介入や、アイドルが「バトルバトル、ラップラップ」と寄ってくることへの違和感や「白い目で見られている時代が長かった」ことに端を発する疑いの気持ちを実直に述べた。
今のブームが過ぎた時、「槍玉にあげられるのは自分だと客観的に見て思う」とR-指定は語り、この日最後の曲『未来予想図』を歌い上げた。
流行が終わり、“過去の人”となった自分を描写するR-指定の姿を見て、客席のパーリナイな空気は一変。鬼気迫るラップに圧倒されたまま、ステージが終了。壇上から二人が姿を消した後も深い余韻が残り、拍手が続いた。
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