永原真夏が11月17日、自主企画『HOME GIRL 3』を東京『月見ル君想フ』で開催した。本記事では当日の模様をレポートする。
Photography_Yasuyuki Kimura
Interview & Text_Sotaro Yamada
秋の夜空の下で、親密な音楽会がはじまる
『HOME GIRL』は、永原真夏がサポートバンドSUPER GOOD BANDとともに開催している定期音楽会。2018年7月に第一回が開催され、今回で3回目の開催となった。SUPER GOOD BANDはサポートバンドとはいえ、永原の相方である工藤歩里(SEBASTIAN X、音沙汰)をはじめ、藤原亮(フジロッ久)、Bambi(DE BESSO)、石塚健丸(ハラフロムヘル)などの実力者が揃う。永原本人も「永原真夏+スパグ」という呼称を多様していることから、ソロというよりも、永原を軸としたひとつのバンドとして捉えた方が良いのかもしれない(たとえばhide with Spread Beaverのように)。
会場となった『月見ル君想フ』は、ステージに丸い映写機で月の映像が写されている特殊なライブハウス。『HOME GIRL3』のテーマは「銀河」ということもあり、ステージは星や光の装飾でキラキラと輝いていた。また、永原や各メンバーの私物(お気に入りのレコードやユニコーンのフィギュア)も飾られていて、ライブハウスという公共の場でありながら、何か私的な空間に招かれたような感覚にも陥ってしまう。秋の夜空の下で行われる親密な音楽会、とでも言いたくなるような、あたたかい雰囲気があった。
まずは、石塚健丸(Dr.)、工藤歩里(Key.)、Bambi(Ba.)、ムラカミダイスケ(Sax.)、百瀬巡(Vio.)、藤原亮(Gt.)がステージに登場。「『HOME GIRL3』、はじめます。よろしくお願いします」という工藤の言葉を合図に音楽が鳴り出す。サックスとヴァイオリンがゆったりとした旋律を奏でるなか、主催の永原真夏(Vo.)が登場。会場が拍手で包まれるなか、1曲目は『青い空』。オーディエンスはゆったり身体を揺らし、リラックスしたムードでライブは始まった。
まばゆさと静けさ、途方もない広がり
2曲目の『新世界によろしく』は、アコースティックギターとの弾き語りver.。ギターレスバンドSEBASTIAN Xの楽曲をあえてギターのみで演奏するというニクい演出に、オーディエンスから笑みがこぼれる。『HOME GIRL3』はこのように、バンドセットのあいまにアコースティック編成の楽曲が挟まれるといった構成ですすんでいく。続く『みえないちから』ではヴァイオリンが豊かな旋律を奏で、『アポロ』ではピアノとサックスがロマンティックさを与えていた。新曲の『ON THE ROAD』も早速披露された。
(永原真夏『ON THE ROAD』MV)
ベースとの弾き語りで演奏された『リトルタイガー』では、永原が情熱的なハーモニカを演奏するシーンもあった。この情熱的なハーモニカと優しいベースのアコースティック演奏は、端的に言って、息をのむほど素晴らしいものだった。
ベースという楽器には「縁の下の力持ち」的なイメージを持っている人が多いかもしれないし、それは間違った認識ではないが、あくまでひとつの側面にすぎない。Bambiのベースを聴けばそのことがよくわかる。彼女のベースは歌う。たっぷりと叙情を含んでおり、詩的でもある。そのようなベースが永原のパワフルな歌と掛け合わされると、楽曲には深い陰翳がうまれる。心の隙間にすっと音が入り込んでくる。オーディエンスは2人の演奏にぐっと見入ることになった。もしかしたら、「永原真夏+SUPER GOOD BAND」というプロジェクトの心臓は、このBambiというベーシストなのかもしれない。
弾けるドラムを合図にスイッチが入ると『FIRE』でふたたびバンドver.へ。続く『オーロラの国』では、イントロのアコースティックギターとピアノが壮大さを引き立て、銀河のまばゆさや静けさ、途方もない広さを感じさせるアレンジで演奏された。
永原真夏、YouTuberにハマる
MCでは「最近、ヒカキンの動画にハマっている」と、なぜかヒカキンについて熱く語り出す永原。会場のムードがさらに和やかになる。動画のオマージュ(?)として、ヒカキンの「ブンブンじゃんけん」方式でオーディエンスとじゃんけん大会が開催され、優勝者には、先日永原が滞在したNYみやげのくまのぬいぐるみがプレゼントされた。
和やかな空気のまま、『スピカ』を工藤と2人で演奏。永原によると、高校時代の工藤は「プリクラにTHEE MICHELE GUN ELEPHANTって書くくらいクールキャラだった」そうだ(それってクールなのか?という疑問はとりあえず置いておこう)。工藤の見事な曲乗りに、オーディエンスは無重力クラクラの旅に吸い込まれ、トワイライトのスピカは銀河を突き抜けて宇宙を手に入れた(※『スピカ』の歌詞とTHEE MICHELE GUN ELEPHANT『デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ』を参照)。
『エイリアンズ』では、SEBASTIAN Xのドラマーである沖山良太が飛び入り参加。担当は「鈴」。沖山はなんとなく居心地悪そうにしながらも、藤原のギターと永原の歌にあわせてゆっくりと鈴を鳴らした。贅沢なドラマーの使い方である。シュールでチャーミングなセッションであった。
最後はいつも祝祭的
『ホームレス銀河』でもう一度バンドver.に戻ると、メランコリックなピアノの裏ではノイジーなエレキギターが炸裂し、銀河を突き抜ける閃光のように鳴り響いた。まるで星の爆発とその後の宇宙の静けさを疑似体験するようでもあった。
その静けさのなかで『フォルテシモ』が力強く鳴り響く。サックスが印象的な永原真夏+SUPER GOOD BANDの代表曲『あそんでいきよう』を経て、ゴダイゴの『銀河鉄道999』をカバー。スカ風のアレンジと迫力あるコーラスでラストスパートをかけると、本編最後は『ロックンロール』。間奏ではそれぞれのソロパートもぶち込み、フロアは大きな拍手に包まれた。毎回、永原真夏のライブは最終的にはお祭りになるから不思議だ。
アンコールには、画家・グラフィックデザイナーの小磯達也がデザインしたパーカー姿で再登場。まずは、『HOME GIRL 4』の開催がアナウンスされた。次回のテーマは「みえないちから」。本企画は、もともと座って音楽を聴いてもらうというテーマではじめたものの、第2回公演でオーディエンスが総立ちになってしまったという経緯から(永原自身もテンションがあがりまくり「みんな立ってくれー!」と叫んでいた)、次回は「アコースティック編」「爆音編」の2種類にわけて、東京と京都で2回ずつ開催されることになった。フロアからはどよめきと笑いが起きた。
そして、できたばかりだという新曲『草冠のライオン』を初披露。爽快なロックナンバーの楽曲には「今これを聴いている君が、明日も生きられるように」という強いメッセージが込められている。ラストは『SUPER GOOD』。「みんなの明日が楽しいと良いなと思う」と涙を流しつつ、『リンダリンダ』や『上を向いて歩こう』などのフレーズをサンプリングしながら熱唱し、ライブは終わった。
銀河のように甘く広がる喜び
一度でも永原真夏のライブを観たことがある人にはおそらく共感してもらえると思うのだが、ステージでの永原を一言で表すとするなら、「喜び!」という言葉がふさわしいのではないかという気がする。
「歌うことの喜び」という点において、永原真夏ほどこれをうまく表現できるアーティストは他にあまりいない。技術とこころと身体だけではなく、ゆれる髪の毛の一本一本から裸足で踊る足の指、吐く息のひとつや目の光にいたるまで、彼女を構成するすべての要素が、喜びという概念を伝える。
そしてそれは「みえないちから」となって周囲の人間に広がっていく。バンドメンバーは演奏することの喜びを、オーディエンスは音楽を聴くことと観ることの喜びを。永原真夏は喜びを他人に伝播させる力を持つ。
この喜びの広がりを「銀河」と呼んでも良いのではないか。
永原真夏が主催する音楽会には、喜びが甘い銀河(Milky Way)のように広がっているのだった。
☆
さて、繰り返しになるが、今回の『HOME GIRL』はテーマが「銀河」。SEBASTIAN X、SUPER GOOD BAND、音沙汰など、永原が抱えるいくつかのプロジェクトから、銀河をテーマにした楽曲が多く演奏された。
だが、セットリストを組む際、本人はあることに気付いたという。それは「自分でつくった曲のほとんどが銀河の曲だった(笑)」ということ。
なぜなのだろう? 永原にとって「銀河」とはどんな意味を持つもので、どのような過去が彼女にこうした楽曲を描かせたのだろう?
……この続きは後日、インタビュー記事として公開します。
セットリスト
1. 青い空
2. 新世界によろしく(歌とギター)
3. みえないちから
4. アポロ
5. ON THE ROAD
6. リトルタイガー(歌とベース)
7. FIRE
8. オーロラの国
9. スピカ(歌とピアノ)
10. エイリアンズ(歌とギターと鈴)
11. ホームレス銀河
12. フォルテシモ
13. あそんでいきよう
14. 銀河鉄道
15. ロックンロール
En1. 草冠のライオン(新曲)
En2. SUPER GOOD
ライブ情報
SEBASTIAN X結成10周年企画第三弾
「ワンマン X 」
2018年12月23日(日・祝)渋谷WWW X
開場 : 17:00 開演 : 18:00
前売 : ¥3.300 (+1d)
出演 : SEBASTIAN X(ワンマン)
チケット情報
・ぴあ Pコード:127-587
・ローチケ Lコード:71320
・e+ http://eplus.jp/sebastianx-wwwx/
永原真夏主催 定期音楽会「HOME GIRL 4」
“爆音編”
2019年1月14日(月・祝)京都nano
開場:18:00 開演:19:00
前売:¥3,500
出演 :永原真夏+SUPER GOOD BAND / +共演者後日発表
2019年1月20日(日)東京 東高円寺二万電圧
開場:18:00 開演:19:00
前売:¥3,500
出演:永原真夏+SUPER GOOD BAND ワンマン公演
“アコースティック編”
2019年1月13日(日)京都 きんせ旅館
開場:18:00 開演:19:00
前売:¥3,500
出演 : 永原真夏+SUPER GOOD BAND / 坂口喜咲(ex.HAPPY BIRTHDAY)
2019年1月27日(日)東京 吉祥寺曼荼羅
開場:18:00 開演:19:00
前売:¥3,500
出演:永原真夏+SUPER GOOD BAND ワンマン公演
※曼荼羅公演のみ完売
全公演チケット情報
永原真夏officialメール予約
manatsu.info@gmail.com
公演名、お名前(読み仮名)枚数をご明記のうえご予約下さい。
永原真夏
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