・僕たちの未来
「ひとりじゃない」「君と辿り着く その先へ」と希望を感じさせるフレーズが随所に散りばめられた、家入レオの楽曲の中でも屈指のポップチューンであり「光」の楽曲。「Shine」で歌われたような家入の人を肯定するエネルギーが、アーティストとしての成長を経てよりパワーアップし、スケールが大きくなった。最後に響くコーラスも力強く、聴く人を大いに勇気づけてくれる。
・もし君を許せたら
2018年にリリースされた14枚目のシングルで、ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』のために書き下ろされた楽曲。R&Bのテイストも感じさせるミドルテンポの楽曲で、たゆたうようなリズムの中で行き場を失った愛が渦巻く。「もし君を 許せたら/また誰かを 愛せるかな?」と歌うどこか冷めたような声は、感情的でないからこその絶望を滲ませる。激情とはまた違った方法で、人間の深い「影」を描いた一曲。
・未完成
「もし君を許せたら」に続き、こちらも同名ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌として書き下ろされた1曲。ストリーミングサービスでもかなり再生されているようで、今まで家入レオの楽曲を聴いていなかった層からも、大きな反響があった。
25歳を迎え、「未完成」な自分をありのままさらけ出すことを覚悟して生まれたこの楽曲では、「どうしたら良いか 分からないんだ」とむき出しの感情を歌っている。そこで描かれる混乱は暗くて重いが、正面から向き合うことで出口が見えるものでもある。光と影を歌ってきたアーティスト・家入レオが、自分の人生と向き合って生まれた新たな「影」の楽曲と言えるだろう。
・Answer
「未完成」が「影」の楽曲だとしたら、「Answer」は「光」を歌った楽曲の到達点と言えそうだ。「はじまる気がする/あたらしい僕が」という歌詞は「未完成」のその先を見つめているような強さを感じさせる。印象的なのは、同じく光の側面を歌った「Shine」や「僕たちの未来」とは違い、家入が何より自分自身に対して問いかけ、歌っているように聞こえる点。そしてその強さを手にし、新たな場所へ踏み出す姿が、何よりも聴く人の背中を押してくれる。
25歳になり、その「光と影」はより複雑で豊かに進化
この記事では、代表曲をもとに、彼女が描いてきた「光と影」を考察してみた。彼女の曲は10代の多感な頃に作られたものほどソリッドで、近作になるほど複雑で豊かさを増しているように思えた。そして、2020年に発表された「未完成」「Answer」では、家入が自分自身と向き合ったその深度がさらに高まっているように感じた。
光と影。それは最初にも書いた通り多くの人にとって普遍的な感情で、このテーマを歌うアーティストも数多くいる。しかし、こうして見てみるとわかるように、彼女が歌う「光と影」は驚くほどに多彩だ。一貫したアーティスト性と、時には自分自身の人生も反映しながら変化し続けること。その二つを兼ね備えているからこそ、家入レオの音楽は多くの人の心を震わせ、一人一人の「光と影」に寄り添うことができるのだろう。
最後に、この考察を読んでくれた家入レオ本人から、メールインタビューにて“Answer”をもらった。
家入レオからのAnswer
――計8曲について「光と影」をテーマに考察させてもらいました。考察とは違う家入さんなりの解説があれば、それぞれコメントをいただけますと幸いです。
家入レオ : 少しだけ、私なりの思いを付け足して説明させていただきます。
まず「Shine」。この曲はわたしにとって、「闇からの脱却」がテーマでした。光の方へ歩いていきたいと歌っている=今自分が身を置いているのは「暗闇」という意味もあります。切なさを宿した曲になっているのでは、と思っています。
「Bless You」は、「初めて聴いた時、サビの歌詞がすごく衝撃的でダークだった」とよく言われるのですが、“愛なんていつも残酷で もう祈る価値ないよ”、つまりは、もう真っ暗な場所からは踏み出せている、グレーゾンから白を目指せているということ。実は「光」の歌なんです。
1曲1曲の解説とっても深いところで書いてくださって嬉しかったです。ありがとうございます。
――家入さんの音楽には「光と影」がテーマとしてあるように思います。ご自身では、「光と影」というモチーフや二面性についてどう感じていますか?
家入レオ : 自分の中にいつも光と闇が同時に存在していて、魂がプラス極とマイナス極、別々の方向を目指そうとするから引き裂かれそうになることがあります。でも、それも人間らしくて素敵だとわたしは思っていて。
綺麗なもの、素直な心に感動する日もあれば、そうしたものを汚したい、壊したい衝動に駆られる日もある。一つの感情で生きなくていい。という気持ちが根本にあると思います。程度の差はあれどみんないつも、会社と自分、恋人と仕事、友達と自分、と何かと何かの間で揺れて心を動かしていて、思いっきり真面目に生きてみたり、その反動で不真面目にくだを巻いてみたり。
自分という人格の中に、複数人の自分が存在することを肯定してから、すごく生きやすくなりました。それは嘘とは違って、全部本当の自分なんだと思います。
――「未完成」以降、家入さんの楽曲の中での向き合い方が変わったようにリスナーとして感じています。ご自身の中で変化を感じていることがあれば教えてください。
家入レオ : ここ数年、ずっと自分はこのままでいいのかな?ってなんとなく悩んでいて。考えているだけじゃダメだって行動しても空回りすることばかりで、どうしようって思ってたんです。一人でいるとまた負のループに落ちて行くから、必然的に誰かと一緒にいる時間が増えて。
だけど自分が未完成のままだから、愛をもらっても、上手く受け止められないし、またそういう自分に悲しくなって、相手を傷付けてしまう。結果的に、大切なものを失ってしまったんですけど、だからこそ気づけた事もありました。
もう自分にも人にも嘘をつくのをやめようって思ったし、わたしは未完成です、って言えるようになりました。それが大きな変化だと思います。
――「未完成」「Answer」の2曲について、家入さんご自身の言葉で楽曲に込めた思いなどを自由にお話しください。
家入レオ : 『未完成』は、とても人間らしい曲になりました。
「上手く幸せになってね」って相手に真っ白な心で伝えるためには、自分の中に残ってしまっていたWhy?と向き合うしかないなって。どうしてあの時って相手と自分に対しての後悔を曝け出してて。だからこそ、最後サビの「会えてよかったと君が笑う もう自由だよ」が、“あーやっと終わった。やっと安らかな自分に戻れる”って、涙とか怒りが昇華されるというか。
『Answer』はその「未完成」での清算を経て、わたしは今自分にひとりぼっちになる強さを送ってあげないといけない、って思ったんです。人や世界から刺激をもらうことは良いことだけど、もう一度自分の幹を、歩いて行きたい道を時間をかけて問うべきなんじゃない?って。とても清々しい気持ちで曲を書いたのは本当に久しぶりで勘が戻ってきたな、と思います。
1st EP『Answer』
2020.05.13リリース
CD+DVD / VIZL-1766
¥3,000+税
Colourful Records
紙ジャケット仕様・スペシャルブックレット(32P) 付
<CD>
01.Answer
02.秋桜(山口百恵)
03.Swallowtail Butterfly ~あいのうた~(YEN TOWN BAND)
04.悲しみの果て(エレファントカシマシ)
05.POP STAR(平井堅)
06.泣くかもしれない(下田逸郎)
07.Answer (Instrumental)<DVD>
Answer (Music Video)
Answer (Music Video Making)
2020.05.13リリース
アルバム / VICL-65372
¥2,000+税
Colourful Records
<CD>
01.Answer
02.秋桜(山口百恵)
03.Swallowtail Butterfly ~あいのうた~(YEN TOWN BAND)
04.悲しみの果て(エレファントカシマシ)
05.POP STAR(平井堅)
06.泣くかもしれない(下田逸郎)
07.Answer (Instrumental)
家入レオ
オフィシャルサイト
http://leo-ieiri.com
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STAFF Twitter
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