デビュー16周年を迎えたJUJUから4枚組52曲入りの充実感溢れるベスト盤『YOUR STORY』が届いた。
聴き手のリクエストも含め代表曲や人気曲が多数収まった同作品は、4種の劇場カラーに分かれ、各盤毎に聴き手なりの各々のストーリーを育んでいくであろう収録曲群も特徴的。タイトル通り彼女の歌を基に、いつの間にか聴き手自身の経験やまだ見ぬストーリーへ想いを馳せさせ、聴く者毎に独自のストーリーを紡いでいかせる作品内容となっている。
「あくまでもストーリーテラーや語り部的なシンガーであれ」を自銘に歌い続けている彼女。が故に彼女の歌ってきた物語たちは、多くの人に自らを主人公に仕立て、想いを重ね、まるで自身の物語のように心や口にて一緒に謳わせてきた。
そんな多くの者を魅了してきた彼女だが、実はあることを意識して歌ってきたと語る。そこに多少の意外性を抱きつつも話を訊くうちに、が故に、そこに聴き手が入り込み、物語を展開しやすい要因に結びついていることへと思い至った。彼女は何を意識し、どのような心持ちであの歌唱を用い多くの人を惹きつけてきたのか?この取材でその断片が改めて露わになった気がしている。
物語の主人公に沿いながらも、絶対に自分の主観では歌わないようにしている
――今回の取材を機に、これまでの楽曲を改めて聴き返させていただきましたが、まさしくこれまで各曲で各々の歌物語が繰り広げられ、その1曲1曲がまるで自分のことのように響きました。
2004年のデビュー曲と2ndシングルはどこにも響きませんでしたが(笑)。そこから1年半後ぐらいの3枚目の「奇跡を望むなら…」以降ですね、そうなり始めたのは。実はその際には「このシングルがダメだったら契約終了です」という場面まで追い詰められていて…。そこで出したのがあの曲だったんです。
――JUJUさんの最初の大ヒット曲でもあります。
当時、楽曲を聴いて下さった方々からお便りをもらう機会が増えたんです。それまでは誰が聴いているかも定かじゃないし、それこそ「聴いてくれている人なんていないんじゃないか?」との不安のなか歌ってましたから。でもそのお便りを読んだ瞬間から、聴いてくれている方々の存在が実感できるようになったんです。それはこれまで感じたことの無かった喜びでしたね。「聴いている方が居る中で歌える自分はこんなにも幸せなんだ…」と。そこからですね、「聴きたいと思って下さる方へ聴きたい曲を歌いたい」へと歌への概念が変わったのは。
――それ以降、聴く方の為の歌を歌おうと?
ですね。なのであの曲は私の歌に向かう気持ちも変えてくれた楽曲でもありました。それもあり今回のベスト盤は、私が変わった「奇跡を望むなら…」以降、いわゆる「JUJUはこうあるべきだ!!」という変な自己のこだわりを捨ててからの私が詰まったものでもあるんです。
――では、聴く方々と一緒に歩んできたこの16年でもあったと。
それこそ色々な場面でJUJUに出会って下さった方々に望まれて育まれて、ここまでこられた16年でした。
――振り返ると、「奇跡を望むなら…」以降、聴き手に寄り添ったり、想いを重ねたり、自分のことが歌われているように響く歌へと移ってきた感があります。
私は「歌うこととは語り部である」と唱えながら歌っています。1曲ってそれこそ1つの物語でもあるので、それをみなさんに私を通してお伝えする。そんな役割かなと。なので経験したことがないことは歌わないと決めてるし、私がこれまで経験してきたことも、一度でも人を好きになったことがある方だったら、年齢や性別問わず誰もが経験してきた、またはしていることでしょうから。なのでレコーディングの際も、物語の主人公に沿いながらも、絶対に自分の主観では歌わないようにしています。
――意外です。あれだけ感情移入して歌われているので、逆にかなり主観的に歌っている印象がありました。
実は違うんです。もちろん主人公の気持ちに自身を投影はしていますが、私が歌っているけど、聴いた方自身も歌っているような感覚に陥る。そこを目指し、「この歌の主人公は自分だ!!」と思ってもらえることを心がけて毎度歌っています。但しライヴは違いますよ。
――逆にライヴでは主観的に?
ライヴはそうじゃないと伝わらないんです。自分の力を150%ぐらいまで出してようやく伝わるものだったりしますから。
――なるほど。その「聴き手を想う」には、いわゆる<聴き手が描いている「JUJU像」を裏切らない>や<期待に応える>の類いも含まれていますか?
そのおっしゃられた「JUJU像」が私の中では有るようで無くて。しいて言うならヒールを履いて帽子をかぶってる女性ぐらいなものかな(笑)。私自身、様々な音楽が好きで、アルバムだとそれこそコンピレーションみたいですから。「これ、同じ人が歌っているんですか!?」ぐらい多岐に渡ってる。もちろん「奇跡を望むなら…」以降、バラードシンガーとのイメージを持たれている方もおられるでしょう。でも実際、その次の大きなターニングポイントの「素直になれたら」、あれもロックバラード調だったし。ある人は、その「奇跡~」と「素直に~」を気に入ってくれて、当初はそれが別々の歌い手だったと思っていたようなんです(笑)。
――そのような方がおられてもおかしくないほどタイプが違う2曲ですもんね?
で、次の「やさしさで溢れるように」も気に入ってくれて、これもまたそれらとは別人が歌っていると思われていて。またその次の「明日がくるなら」も気に入り、これも別の人と思われていたらしく(笑)。いわゆるその人の中では一発屋が沢山いる感じだったようなんです。で、「えっ!?これ全部同じ人だったんだ!!」と、ある瞬間に知ったらしいんです。その話を訊き、「やはり私はどんなタイプを歌っても「歌」として受け入れてもらえるシンガーなんだ!!」との自負が改めて強まったんです。実際ままならない恋の曲の歌の次に、急に吹っ切れたみたいなパーッとした曲を出したりしてきましたから。以前もその急変やいきなりのふり幅に対してニューハーフの友人から、「あなた躁鬱なんじゃない?」なんて心配されたぐらい(笑)。もちろん、それを都度受け入れて下さってくれた聴き手の方々の懐の深さに感謝しています。
人の細胞は8年周期で入れ替わる?ならば私も8年周期で活動していこう
――ここまで話を訊いて、今回のベスト盤のタイトルを『YOUR STORY』にした理由も非常に合点がいきます。
そうなんです。「あなたの物語」を私は16年間歌ってきたので、まさに今回のこのベストは、「このあなたの物語の中で、今の自身に最もしっくりくる主人公はどれですか?」そんな問いかけでもあるんです。「奇跡を望むなら…」以降の私を語り部として、受け入れて下さったみなさんと紡いできた物語たちを見直した際に、「この曲たちって1曲1曲が短編映画みたいだよな…」と改めて感じたんです。そこから今回、その短編映画を多数抱えている「シアターJUJU」というシネコンを設定し、RED、PURPLE、PINK、BLUEの4つのシアターを用意してみたんです。
――その各色毎にも各々特徴がありそうです。
あります。Theater REDは色恋を超えた更に大きな愛。そんな短編物語が13編。Theater PURPLEは、人はままならない想いをすることもあります。そんなままならない想いをしているあなたにぴったりな短編物語を13本。そして大きな愛へと向かうにせよ、ままならない愛になるにせよ、当初の想いは淡いピンク色でしょう。そんなときめいたり、うっとりしたり、キュンキュンな13編がこちらのTheater PINKで上映されています。で、Theater BLUEは地に足をつけて生きているあなたに贈るハッチャける為や背中を押してもらいたい等、とにかく毎日頑張っているあなたにピッタリな13編…。そんなベストにしたんです。
――おおっ!!
でも基本、みんな大人だし頑張って働いている。なので基本軸はBLUEなんです。BLUEとして日々頑張って生きていきながらも、恋に落ちてはPINK色になったり、そこからPURPLEの、ままならない恋に陥ったり…それを昇華していくと、かけがえのない誰かと出会える。それが最終的にはREDでもあるんです。なので並びもRED、PURPLE、PINK、BLUEの順で。追って最後まで聴き、また帰着点でもあるREDに戻っていくと。加えて各盤にも1曲づつアルバムではここでしか聴けない曲たちも入れたんです。で、みなさんにやさしさが溢れてもらいたかったので、最初が「やさしさで溢れるように」。以降、最終は「STAYIN’ ALIVE」で。今まで生きてきたご褒美的な、酸いも甘いも噛み分けて全て覚悟して受け入れる。そんな気概が込められている曲(「STAYIN’ ALIVE」)をラストに持ってきました。そこで「これからも頑張ろう!!」となってもらい、また頭の「やさしさで~」に戻っていくという。
――是非ループして聴いて欲しいですね。ちなみに選曲はファンからの希望にも応えているとか?
そうなんです。昨年のリクエストライヴの際にもらったみなさんからの希望も大いに参考にさせていただきました。結果シングル曲やタイアップ曲のみならずアルバムの中からのチョイス等、バランスの良い選曲になったなって。
これらの歌はみなさん一人ひとりの物語でもあるんです
――ここからはこのベストに収録の新曲や初アルバム収録曲たちについてを。まずは「あざみ」ですが…。
これは原曲を聴かせてもらった際に、もう「REDにピッタリな曲だ!!」って。REDの神髄とも言える、「何があっても消えない愛はここにあります」との信じたい強い想い。これがもうREDにピッタリで。歌入れの際は歌っている最中に極まり、泣きそうになってしまって途中中断してしまった曲でもありました。
――PINKに収録の「Stop Motion」も全くの新曲ですね?
PINKにピッタリな曲ですよね。「「PLAYBACK」の続編を作りましょうよ」と制作したんです。当初は(日本テレビ系土曜ドラマ)「トップナイフ―天才脳外科医の条件―」の主題歌用に提出した2曲のうち1曲(起用されたのは「STAYIN’ ALIVE」)でもあって。私的には「この曲が決まるかな?」との予想でしたが、「STAYIN’ ALIVE」が選ばれて。ストップモーションってコマ送りって意味なんです。夏の不埒やアバンチュールな想い出(笑)ってけっこうストップモーション的に記憶に刻まれていたりするじゃないですか?なので。それこそこの曲はライヴでも盛り上がるしアクセントになるでしょう。この曲をライヴで歌うのが待ち遠しいです。
――PURPLEの「Woman In Love」も配信限定だったので盤には初収録です。こちらはどこか祝福感があります。
私の持論なんですが、この世には絶対にその人と出会うべく人が居る。そんな歌です。例え一筋縄ではいかない相手でもその人と出会えたこと自体が素敵なことなので、この人と出会えて良かったと歌える。そんな曲です。人によってはウェディングソングに捉えるかもしれませんが、それに限らずそこに至らなくても誰かに出会えたこと、その重要さや尊さに重きをおいてます。
――「STAYIN’ ALIVE」もアルバムでは現段階、このBLUEでしか聴けませんね。
ここまで踊っているMVはかつて無かった曲です(笑)。ドラマのために書き下ろされた曲ではありますが、メッセージ的には、例えどんな人でも今まで生きてきて、ここまでしんどいこともあったろうに、それをきちんと乗り越えて今がある。だとしたらここから先も何があっても全てを受け止め受け入れる覚悟ができるだろうなって。華麗に咲く花なら華麗に散ってもいいじゃないか?と。今の世の中に絶対に必要だし必要不可欠な曲だと自負しています。
――この曲は「やり直せないミステイクも 笑い飛ばせたらスパイス」のフレーズも印象的でした。
この場合のミステイクは「どんな間違いも、その事実は消せないけど、そこから学ぶことは確実にあるし、その一つのミステイクに惑わされずに生きていけば、いつかそれすら凌駕する素晴らしい想い出や学びのスパイスへと機転一つで転換できる」。そんなニュアンスだと捉え歌いました。
――ここまで泥臭い曲も初だったのでは?
泥臭いですねこの曲は(笑)。でもその泥臭いのが私が想う大人のカッコ良さでもあって。いわゆるカッコつけないのが大人、みたいな。カッコ悪い自分を認めてなんぼだし。例えカッコ悪くても、それでも生きていかなくちゃならないし生きていくし。全てのマイナスやネガティブなこと、それらを受け入れて転化させて笑い話にしていく。自分自身にも大丈夫大丈夫といなしてくれる曲です(笑)。私自身、この曲にかなり力をもらいました。
――最後にこの盤たちに込めたメッセージをお願いします。
それこそ今回は52本の短編映画をそれぞれの映画館にご用意しましたので、日々自分が主人公になれる短編を探していただけたらなと。この52本の短編のうち、どれかしらかみなさんと重なったり、主人公になれたりする曲があると思うんです。それは日々違うかもしれないし、時によっては同じ曲でも違った感受があるかもしれない。その「これだ!!」という曲と今の自身との答え合わせも面白いかな、と。。これらの歌がみなさん一人ひとりの物語だと思って聴いていただけると嬉しいです。
〈リリース情報〉
『YOUR STORY』
2020.04.08 release
初回生産限定盤 CD+DVD (AICL-3860~3864)
4CD+三方背スリーブ仕様+豪華ブックレット+特典DVD付
¥5,280 (税込)
通常盤 CD (AICL-3865~3868)
4CD
¥3,600 (税抜) ¥3,960 (税込)
初回生産限定盤・映像収録内容
・Music Video 全10曲
「PLAYBACK」「What You Want」「believe believe」「いいわけ」「東京」「かわいそうだよね(with HITSUJI)」「メトロ」「ミライ」「READ MY LIPS」「STAYIN’ ALIVE 」
・Special Interview “MY STORY”
JUJU BEST ALBUM『YOUR STORY』Special Site
https://www.jujunyc.net/yourstory/
収録曲
Theater RED
やさしさで溢れるように / ただいま / Eternally / 守ってあげたい / 願い / また明日… / 明日がくるなら original duet version (with JAY’ED) / sign / 東京 / YOU / ありがとう / あざみ
Theater PURPLE
この夜を止めてよ / ラストシーン / つよがり / 予感 / くちづけ / いいわけ / My Life / If / 君がついた嘘なら / さよならの代わりに / Distance / あなたがくれたもの / Woman In Love
Theater PINK
素直になれたら(feat.Spontania) / 桜雨 / ナツノハナ / 星月夜 / believe believe / 甜い罠 / PLAYBACK / READY FOR LOVE / 始まりはいつも突然に / READ MY LIPS / Hold me, Hold you / Trust In You / Stop Motion
Theater BLUE
奇跡を望むなら… / Dreamer / Hot Stuff / What You Want / Voice / Door / ミライ / 空 / ANTIQUE / PRESENT / かわいそうだよね(with HITSUJI) / メトロ / STAYIN’ ALIVE
JUJU
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