ソリッドなドラムのビートの刻みを挟みライブは後半戦へ。アップテンポなナンバー「Gypsy」の始まりだ。サビが終わると同時に、観客からの声が東京キネマ倶楽部に大きく響きあう。ギターとベースの掛け合いパートでは一際大きな歓声が送られた。続く、4つ打ちのビートがダンサブルな「いざ、メキシコへ」ではビートにあわせ体を揺らしている姿が印象的だった。MCでは今回のイベントの趣旨を説明、「GLIMは幻想的、SPANKYは攻撃的な意味を持つ言葉」と説明した上で「今日はそのGLIMに焦点を当てたライブです、いつもとやる曲が違うけど楽しんでいってください」と松尾が語ると、今秋公開の映画「少女」主題歌にもなっているナンバー「闇に目を凝らせば」を披露。チェロのゲスト奏者が特別に入った貴重な編成でのライブを見せてくれた。さらに、「中学二年生のときに初めてバンドを組んで、そのときに父親に勧められて見た『ウッドストック・フェスティバル』の映像の風景と若者たちの気持ちを曲にしたナンバーです」とささやき「ミュージック・フリーク」を披露。その後はカントリーなリズムを持つ「WONDER ALONE」、GLIM SPANKYの”SPANKY”の要素が存分に詰まった「リアル鬼ごっこ」とライブは続き、ラストは歌詞とメロディーが心に突き刺さる「大人になったら」で見事に演奏を締めくくった。
だが、ライブはここでは終わらない。「アンコール!」の声が鳴り響き、再びGLIM SPANKYのメンバーがステージ上に姿を表す。亀本からは「主題歌を担当することになった『ONE PIECE』の麦わら海賊団から今日はお花が来ていた!」、松尾からは「twitterで、夜行バスから今回ライブに来るというファンを見つけ、昔の自分と似ていて懐かしく感じた、みんなありがとう」と少し砕けたMCが語られ、「ここからは雰囲気をさらに変えていくよ!」と映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌にも起用され話題を呼んでいるナンバー「怒りをくれよ」を披露。会場からはシンガロングが鳴り響く。最後にGLIM SPANKYから届けられた、今回のコンセプトライブのラストにまさに相応しい「ロルカ」は印象的で、強くファンの心に彼女たちのパフォーマンスを刻み付けたことだろう。
MCで松尾から語られたように、今回のライブはGLIM SPANKYの”GLIM”の側面にスポットを当てたなかなか体験できない貴重なものだったように思う。小さなころから絵本や、稲垣足穂の幻想的な日本文学に親しみ培われた松尾の独特の歌詞世界観と歌声、その歌声を何倍も魅力的に引き立てる亀本のブルージーなギタープレイ。まさにこの二人でしか体験させることのできないものを観客の心に残せたと確信させる素晴らしいライブだった。今年さらに躍進を続けるであろう二人の今後も楽しみにしたい。
Photo credit by KAMIIISAKA HAJIME
■GLIM SPANKY「Velvet Theater 2016」
開催日:2016年7月9日(土)
場所:東京キネマ倶楽部
セットリスト:
1 ヴェルヴェットシアター
2 (未発表曲)
3 MIDNIGHT CIRCUS
4 焦燥
5 踊りに行こうぜ
6 grand port
7 NIGHT LAN DOT
8 夜明けのフォーク
9 サンライズジャーニー
10 Gypsy
11 いざ、メキシコへ
12 闇に目を凝らせば
13 ミュージック・フリーク
14 WONDER ALONE
15 リアル鬼ごっこ
16 大人になったら
アンコール
17 怒りをくれよ
18 ロルカ
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