「ローファイ」をひとつのステイタスとして捉えるなら、インディーズシーンならではの大きな魅力のひとつだと思う。そして「Gi Gi Giraffe」(ジ・ジ・ジラフ)はその価値を、“宅録”で大胆に表現してきた。誰にも気兼ねすることなく自由気まま。ただ純粋に「音」を楽しんでもらいたい…という想いが、まっすぐに語りかけてくる。純粋だから、意外に「白紙」。ここから先、どんな「転び方」をするのか、とても楽しみなバンドだ。
「春休み」に「Home Made」で「録音、ミックス」で傑作誕生
東京を拠点に、主にライブで活動している若手ロックバンド「Gi Gi Giraffe」(ジ ジ ジラフ)が、アルバム「Home Made Works」をリリースしたのが、2015年8月だった。メンバーは、青山学院大学の「ビートルズ訳詞研究会」で出会った3人。
だが、Home Made Worksの録音はギター兼ボーカルの山本がひとりで録音、ミックスしたものだという。ドラムの上村とベースの奥泉はどこへ行ったのかはあまり関係ない。
「2013年の春休みの、GarageBandを用いて録音・ミックスした完全なる“宅録作品”」というパブリシティが、とても華々しく聞こえる。
「とてもお手軽にお気軽にまとめてみました」的ネガティブ感が、まったく見えてこない。
その“大作感”は、楽曲にも息づいている。「ローファイ」であることを抜群に楽しんでいる雰囲気が、はっきり伝わってくる。
新曲「Naked Girl」のオフィシャルMVも“宅録”感覚
基本的に「Home Made Works」はポップに仕上げられている。だが、あえて「ジャンルレス」を謳うとおり、収録された6曲のスタイルは宅録同様、自由気ままだ。ロックだったりブルージーだったり。
それなのにメッセージはしっかりまっすぐ届く。「面白いことをやってるんだよね、オレたち」みたいな。
ちょっと冷めているようでいて実はとってもポジティブな主義主張が、全編に溢れる。
そんな「面白いこと」が、どうやら新しいステップを踏み出したようだ。6月末に公開されたばかりの「Naked Girl」のMVは、ちょっとサイケなポップ感覚を、抜群のセンスでライブ感たっぷりにまとめあげている。
映像的には決して豪華絢爛なシロモノではない。けれど、やっぱり漂う“宅録”な感じが、妙に居心地よかったりする。すごく普通なファッションとか、なんだかあまり「熱さ」を感じさせないところもまた、変に気取りがなくていい。
フェスでも活躍必至! これからますます「いい味」に!!
2016年の夏には、フジロック・フェスの「Rookie A GO-GO」ステージにも出演。今後はライブだけでなく、大小さまざまなフェス系でも活躍してくれそうな予感がある。
新曲を含む新しいアルバムのリリースにも、期待が膨らむ。
彼ら自身も「白紙」であることを楽しんでいた時間が過ぎていく中で、いろいろなステージを経て、やがて彼らなりの「色」を表現するようになっていくのかもしれない。ごくごく自然な流れとして。
それはたとえるなら、決して誰もが振り返る超美人ではないけれど、名脇役として確固たる地位を築いた一女優の…揺籃期にも似ているような気がする。
彼らはこれから着実に、いい味を出していく。
彼らなりの、いい色に染まっていく。
なにしろ「ジ ジ ジラフ」だけに、「き き きりん」…みたいな?
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