仕事を終え、帰宅して、シャワーを浴びてから寝るまでの時間、各局で放送されている「連続ドラマ」を視聴することが、毎日のルーティーン。
“なぜ、こんなにもドラマにときめくのだろう?”
そう考えた時に気づいたのだ。社会人になるまでずっと実家で生活をしていた私にとって、初めての一人暮らしは毎日がすごく忙しかった。そんな忙しい日々の中でも、友達と過ごす時間を1番に大切にしたい。だからこそ、一人で何かに没入する時間は限られてくる。その限られた時間の中でも、ほっと一息つきながら自分自身と見つめ合えるのが、「ドラマを観る時間」であったのだ。
リアルタイム視聴をするのが、私の基本スタイル。スマホ片手にSNSをメインにドラマの興奮や展開を追いかけ、時を同じくして共有・発見することが楽しみの1つなのだ。新たな発見や、異なる価値観を知るたびに、見逃した部分を動画配信サービスなどで視聴して、テレビの前から離れられないまま朝を迎えることもしばしば。
そんな私が選ぶ「2019年ベストドラマ」を、至極私的視点にてご紹介します! コタツでぬくぬく温まりながらスマホ片手に観るもよし、気の置けない友人たちと集まって観るもよし。私は、この年末年始、実家で母とドラマを楽しむ予定です。どれから観ようかな……と悩んでいるあなたの、おともになれますように。
イノセンス 冤罪弁護士
大手弁護士事務所を「とある理由」によって退職してきた和倉楓(川口春奈)弁護士。次の就職先として選んだ先は、とある小さな弁護士事務所。刑事事件を中心に取り扱うチームではなく、民事事件を取り扱うチームに配属される。そこで出会った黒川拓(坂口健太郎)とともに、冤罪になった人々への救いを科学的根拠や世間一般へ冤罪をより認知してもらうために奮起し、数々の冤罪事件によって普通の暮らしを奪われてしまった人々への救いを働きかけにいく、というストーリー。
ストーリーが進んでいくとともに、「なぜ黒川は冤罪事件を取り扱う弁護士として活躍するようになったのか」という謎が明るみになっていき、キャスト同士の複雑な人間関係が明らかになっていく展開が非常に巧妙なので、ぜひ注目してみてほしい。
現在の日本における司法制度は整備されており、犯罪の検挙率・有罪率も高い水準を誇っている。しかしその一方で、無実の人が罪に問われる冤罪事件も多発しているのも事実。日本において、起訴後の有罪率は99.9%とも言われていて、冤罪であるとしても無罪を獲得するケースはほとんど皆無なのだ。加害者側の弁護士が戦ったとしても、そのほとんどは無罪を勝ち取ることは難しく、再審請求も棄却される可能性が非常に高い。
そんな現在の厳しい司法制度についての理解が世間一般に浸透していないことへの歯がゆさはもちろん、多くの人たちが「事件」を知るきっかけとなる「報道側」こそ慎重になるべき、という点がこのドラマには描かれていた。テレビ・新聞・週刊誌・インターネット……、正誤性が危うい時代だからこそ、本当に正しいことを立証するために私たちは何をすべきなのか、何を信頼していくべきなのか。
ドラマが進むにつれて、冒頭に述べた主人公・黒川がなぜ冤罪事件に対して真摯に向き合い続けるのかが明かされていく。最終回につながる事件は、いわゆるマスメディアのあり方を追従する展開であった。放送を重ねていく中で、黒川から最後、真犯人に向けて語られる一言は胸を突き刺すものが多かった。「真偽の尊さ」をどこまで人は他人に対して図ることができるのかを、深く考えさせられる内容であった。
また、本作の主題歌King Gnu「白日」のロングヒットについても触れたい。「白日」は、バンドにとってメジャーデビュー後初のシングル作品。リリースから約1週間後に公開されたMVは1億回再生を突破、ビルボードジャパンにおける年間ランキング「Hot 100」4位にもランクインしたナンバーである。バンド史上初のドラマ主題歌となるニュースが発表になった際、バンドからのコメントは以下のようであった。
「大なり小なり誰しもが、罪を犯したり犯されたり、傷ついたり傷つけたりして、それでも生きているのでしょう。そんな時、心の襞にそっと寄り添い手を差し伸べてくれる主人公・黒川拓のような存在ほど大切にしたいものです。自分の書く曲もそうでありたいと願っています。」
引用:billboard JAPAN
冤罪であると証明され、無罪を勝ち取ったところで、個人の人生が一生元どおりになることはない。無実の人が、誤った報道されて個人を表す情報が全て世間に出てしまった以上は、それまで予定されていたような、未来に描いていた明るく平穏な人生のレールはない。夢も希望も愛も一変してしまうのである。
「それでも未来に向かって前に向いて歩いてほしいという主人公の祈りにも似た気持ちをが歌曲に込めてほしい」
引用:音楽ナタリー
という、ドラマプロデューサー・荻野哲弘氏のコメントは、「白日」が今年を代表する楽曲となった今もなお、突き刺さるものがある。King Gnu自身が掲げてきた哲学とドラマの世界観が合致し、音楽ファンのみならず、この現代日本を生きる人たちの核心をついた。そんな楽曲だったからこそヒットを生んだのだろう。
初めて恋をした日に読む話
原作は、隔月刊「クッキー」(集英社)で連載中の持田あきによる同名漫画。脚本は『ダメな私に恋してください』『あなたのことはそれほど』などを手掛け、コミカルかつ繊細な人物描写に定評がある吉澤智子が担当している。
主演の深田恭子といえば、記憶に新しいのは、フジテレビドラマ「ルパンの娘」だが、今回はあえてこのドラマをチョイス! なぜなら、横浜流星ブームのきっかけともなる「ユリユリ旋風」や、2019年大活躍だった中村倫也の出演など、2019年の連ドラ界を振り返る上で欠かせないニュースがたくさん詰まった作品だったからだ。現に、ファッションメディア「ELLE」による「エル シネマアワード2019」を中村倫也が受賞、「GQ JAPAN」が、2019年に各分野で最も輝いた男性を表彰する「GQ MAN OF THE YEAR 2019」に横浜流星が選出されている。
そんな「はじこい」のストーリーの肝は、人生何もかもうまくこじらせまくりのアラサー女性・春見(深田恭子)の周りに集まる三種三様の男性とのストーリーの紡ぎ方。なぜ春見が人生をここまでこじらせているのか。丁寧に描かれた人間模様は、アラサー女性のみならず幅広い層から共感を呼んだのではないだろうか。その中でも、「ユリユリ」と対比した主人公たちの年齢=アラサー世代が抱える悩みを支える内容は、胸に突き刺さるものが多い。
自身を思い返してみても思うが、大人になって社会人になってからの現在を、全く想像もしていなかった。青春時代は平凡な暮らしを過ごし、気がつけば淡々と社会人として過ごし、そんな私もまさにこのストーリーの主人公と同じ“アラサー女子”。春見順子(深田恭子)の姿や、その周りのキャラクターたちのセリフには大きく揺り動かされた。一人の人間として世界で生きている自分にとって、毎日起きることや感情の上下、ときめきも悲しみもほろ苦さも全て、その人にとってかけがえのない貴重な体験であろう。但し、この年齢で何かをやり直すことはとても時間がかかるし、やり直そうにも着手するべきポイントがわからないことも多い。そういった“こじらせ女子”の描写が俊逸なのである。
他者とアンチテーゼを共有するのではなく、肯定する世のために自発性を保ち、理想を現実にするための努力を、「東大受験」というゴールの上で学んだ主人公たちのストーリーは、対人関係や社会的立場においても同様だ。大切にしたいものや人を守るための経験や知恵は、積み重ねである。多義的な「学び」は、人生最後の瞬間まで不可欠だ。そのための人生を豊かにするための術も、このドラマから紐解けるだろう。
今作では、同曜日同時刻枠で放映されていたTBSドラマ「大恋愛」の主題歌に続き、back numberが「HAPPY BIRTHDAY」で主題歌を務めた。
さらに、それまでサブスクリプションサービスでは聴くことのできなかったback numberの楽曲(LINE MUSICでは2018年11月より先行配信)が、ドラマ放送期間の中盤(まさにユリユリ旋風が巻き起こっていた最中)、Apple MusicやSpotifyなどでも解禁したことも大きなニュースだった。代表曲からインディーズ時代の楽曲までが一気に解禁されたことで、ドラマをきっかけにback numberのファンになった人も多かったのではないだろうか。また、ドラマの主題歌にもなった「HAPPY BIRTHDAY」とともに、3月27日には、6枚目となるオリジナルアルバム「MAGIC」をリリースしているので、気になった人には、こちらもチェックしてみてほしい。
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