19歳のラッパー/シンガー、ちゃんみなが、2月25日に渋谷TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ『THE PRINCESS PROJECT』を開催した。本ライブはちゃんみなにとって、昨年3月に行われた『ちゃんみな 1st Live 未成年〜To be QueeN〜』以来2度目のワンマンライブとなる。前回に続き、演出のすべてをちゃんみな自身がプロデュース、LINE LIVE同時中継では30万ビューを記録した。本記事では、当日の様子をレポートする。
Photography_Hiroyuki Dozono
Text_Sotaro Yamada
ちゃんみなの実力に、ようやく人気が追いついてきた
前回のワンマンライブが行われた代官山UNITのキャパシティは約450人で、今回の渋谷O-EASTは約1200人。1年間で約3倍の大きさとなる会場でライブができるようになったことは、たしかに素晴らしい。しかし、ちゃんみなの人気は、2ndアルバム『CHOCOLATE』 のリリース以降加速度的に上昇している。はっきり言うと、ちゃんみなにとって渋谷O-EASTは狭すぎた。チケットがソールドアウトしたのはもちろん、関係者席にも人があふれ、この日のO-EASTはパンパン。彼女の勢いにふさわしいのはもっと大きなステージだろう。
高い実力に、ものすごい速さで人気が追いつき始めている。開演時間は約20分押しで、場内は汗をかくほどの熱気にみちていた。来場者の男女比は、前回のワンマンライブに比べると男性の比率が増えただろうか。男女分け隔てなく支持されていることがわかる。
『THE PRINCESS PROJECT』へようこそ:バンド編成でスタート
ステージには紗幕が貼られ、森の中にたたずむ城と『PRINCESS PROJECT』の立て札が映し出される。客電がおちれば、「みなさん、ようこそいらっしゃいました」と呼びかけるナレーションが流れ出す。ホーンテッドマンションのゴーストホストを思わせる男性の声が、観客をPRINCESSが住む城へと案内する。
エンタメ意識の強いちゃんみなは、初めてのワンマンライブでも「城から逃げだしたPrincessが旅をする」という設定をもうけていた。今回は「自分の住む城へみんなを招いて楽しませる」というコンセプト。まるでテーマパークのアトラクションのようなオープニングに、フロアからは歓声があがった。
城へ入ると、映像が消え、紗幕の向こう側がうっすらと見える。1曲目『Princess』が始まる。ちゃんみなの歌声が紗幕の向こうから聞こえてくるが、彼女の姿はまだ見えない。いつもと雰囲気が違う。何が違うのか? 音が違う。実はこの日、ちゃんみなはライブに生バンドを取り入れた。それによって、楽曲の持つ強さがさらに引き出された。
1サビを歌い終えると、2曲目『FXXKER』が始まり、紗幕がおちる。ステージ上にはドラム、ベース、ギター、キーボードという4人のバンドメンバーと男女8人のダンサーがずらっと並ぶ。中央には赤い階段がセットされ、一段上がった場所には2人のオネエダンサーを両脇に従え玉座に鎮座するちゃんみなの姿が。ゆっくりと立ち上がり、階段をおりてくる。重厚な生バンドの演奏と激しく踊るダンサーたちに囲まれフロアを見おろす。すでに、女王の風格すら漂っている。
続く『You can’t win me』はインディーズ時代から歌い続けてきた曲だが、中近東を想起させるダンスや幾何学模様の映像がスクリーンに投射されることで、まったく別の曲に生まれ変わった。ちゃんみな流アラビアンナイトの始まりということか。
伝統と革新、国境を感じさせない様々な文化の融合、これらはちゃんみなのライブのひとつの特徴だ。それはインターネット以降に生まれた時代性と、韓国・アメリカ・日本の3カ国で育った彼女の背景に由来するものなのかもしれない。
まるでミュージカルのような演出と“大人ver.”のちゃんみな
ジャージとノースリーブというラフな格好に着替えた『FRIEND ZONE』では、さっきまでのド迫力な演出とは一転して、まるで友だちの家にいるようなリラックスムードを演出。かと思えば、『BEST BOY FRIEND』では脇のサブステージにベッドルームを設置し、恋人役のダンサーと激しいラブシーンを繰り広げる。あまりにもリアルなベッドでの演出にフロアは大興奮。この時の様子を表現する正確な言葉が見つからないが、「かつて、ここまで大胆な表現をした19歳の日本の女性アーティストがいただろうか?(いや、いない)」とでも記しておこうか。初めてちゃんみなを見た人は驚いたに違いない。
演劇的なこだわりは、ライブを通して強く見えた。『TO HATERS』では戦闘服姿のダンサーと怒りを込めたダンスを力強く披露。ステージに歌詞を投影し、レーザーを放って感情の昂りをあおった。また『WHO ARE YOU』では4枚の鏡を用意。それをフロアに向けると、観客の姿が写り、ちゃんみなと観客が一緒にステージに立っているように見える。これは楽曲に込められた意味を可視化するための素晴らしい演出だった。「わたしが誰なのかを教えてくれた」のは、目の前にいる観客たちなのだ。
『BEST BOY FRIEND』のベッドシーンに顕著なように、“大人”ということも今回の裏テーマのひとつだったのかもしれない。
中盤では『OVER』をアコースティックver.で披露。原曲のトロピカルな要素を取り除き、透き通る歌声でラグジュアリーに歌いあげ、しっとりと大人っぽいステージを演出した。さらには自身の原点でもある曲、BIG BANGの『HARU HARU』をカヴァー。しかも韓国語、英語、日本語と3つの言語を織り交ぜたハイブリット・アコースティックver.で披露。3ヶ国語を操るトリリンガルのちゃんみなだが、母語である韓国語を楽曲に取り入れたのはこれが初めてだ。
HARU HARUとは韓国語で「一日一日」という意味。「過去の恋愛も一日一日薄れていく」、あるいはMVで恋人が最後に病気で死んでしまうことから「かけがえのない一日一日の大切さ」といったメッセージが込められた楽曲だが、『HARU HARU ちゃんみなver.』からは「一日一日の積み重ねによる進化」といった側面が強く感じられた。
(BIG BANG『HARU HARU』MV)
さまざまな文化の融合と、若者たちの代弁者として
遊び心や面白さも忘れない。スクリーンに映し出されたVTRでは、ちゃんみなの相棒である2人のオネエダンサーが「アイドルになりたい」と言い出し、3人で「ミス・ペイン」なるユニットを組むといったコント的なコーナーもあった。VTR内でうさぎの着ぐるみや制服姿といったコスプレ(?)も披露し、そのコミカルなやり取りにフロアからは笑いが起きた。
VTRからそのまま出てきたようなピンクのスカートで登場した「ミス・ペイン」によるデビューライブ(?)『LIGHT IT UP』や、続く『未成年 feat.めっし』でちゃんみなの親友・めっしが登場した時は、本公演でもっとも和やかな空気が流れた。
ライブ後半の『MY NAME』ではサブステージで椅子に縛られた“危ない女”と対峙。MVでもおなじみのこの女性は、ダンスユニットAyaBambi(アヤバンビ)のBambi(バンビ)。マドンナのワールドツアーにバックダンサーとして同行したり、アレキサンダー・ワンのキャンペーンビジュアルに起用されたりするなど、世界的なダンサー・モデルだ。Bambiと暗黒舞踊のようなやり取りを見せたあとは、メインステージに戻って椅子を使ったパフォーマンス。これはK-POPのアーティストが時々やるもので、タフさとセクシーさの両方が際立つ。日本のホラー、アングラ、ゴシックとK-POP的要素という様々な文化の融合が見られた。
(ちゃんみな『MY NAME』MV。特にラストのホラー演出に注意)
ラストは『CHOCOLATE』。歌い出しから終わりまで大合唱が起き、一体感が生まれた。
(ちゃんみな『CHOCOLATE』MV。豪華ゲストに注目。「配達メーン」からの「俺やでーっ!」)
この曲に限ったことではないが、今回のライブでは、まるで人気ロックバンドのライブのように、多くの場面でシンガロングが起きたことが印象的だった。
もともとラップの文脈で登場したちゃんみなの曲は、言葉数が多く、歌うことはそれほど簡単ではない。メロディーが良いので耳にはよく馴染むが、しっかりと歌詞を読んで歌い込まないと、フルで歌うことはちょっと難しい。それなのに、かなり多くの観客が、曲のはじめから終わりまでちゃんみなと一緒に歌を歌っていた。
これはどういうことか? ちゃんみなの楽曲がファンたちの「自分の歌」として定着しているということだろう。楽しい曲にも怒りにみちた曲にも、彼女の曲には「自分たちの言ってほしいことが代弁されている」と感じさせる力がある。
20歳の誕生日はZepp DiverCityで
アンコールでは「まだデビューして1年だけど、こんなにたくさんのみんなと会えてよかった。こんなに素敵な時間を過ごせて、曲を聴いてもらえて、本当に嬉しい」と涙ながらに語る。フロアから「大好きー!」という言葉が何度も飛び交った。
さらに、20歳の誕生日となる10月14日に、Zepp DiverCityでのバースデーワンマンライブが決定。「もっともっとパワーアップしたわたしを見にきてください!」と意気込むと、フロアからはこの日いちばんの大歓声が起きた。
最後はこの日出演したすべてのダンサーたちが集結し、全員で『LADY』を披露。一体感と多幸感に包まれ、まるで上質なミュージカル映画のようなライブは幕を閉じた。
ちゃんみなの特徴は、ジャンルを越えて様々な要素を取り入れながらも、どのジャンルにも属さないハイブリット感ではないかと思う。
それは音楽のジャンルだけではなく、映画、演劇、舞踊などの芸術や、日本、韓国、アメリカ、その他様々の国や地域の文化などを取り入れていることにも表れている。バンドメンバーやダンサーを見ても、人種や性別に多様性があって偏りがない。真の意味でボーダレスであり、彼女を見ていると、それが世界の縮図のような気がしてくる。
こうした点から考えると、すでにちゃんみなは、アーティストとして世界基準にあると言えるかもしれない。
JKラッパーとしてシーンに登場し、未成年の怒りを代弁してそのキャラの強さで注目されたちゃんみなだが、メジャーデビューを経て、音楽家としても演出家としても、内に秘めていた才能がいままさに開花しつつある。
今年、ついに「未成年」ではなくなるちゃんみな。その瞬間、10月14日、Zepp DiverCityでは何が起きるだろうか?
かつてちゃんみなは、ミーティアのインタビューにて「20歳になれば20歳でしか歌えない歌がある(中略)そういうことは結構細かく考えてて、未来の歌をストックしてます」と語った。
20歳のちゃんみなにしか歌えない歌――。
真の「LADY」となる約半年後の彼女に思いを馳せて、このレポートを締めたい。
セットリスト 2018年2月25日 渋谷TSUTAYA O-EAST
M1. Princess
M2. FXXKER
M3. You can’t win me
M4. GREEN LIGHT
M5. FRIEND ZONE
M6. BEST BOY FRIEND
M7. TO HATERS
M8. WHO ARE YOU
M9. OVER
M10. Haru Haru (BIG BANGカバー)
M11. LIGHT IT UP
M12. 未成年 feat.めっし
M13. She’s Gone
M14. MY NAME
M15. ダイキライ (TeddyLoid feat ちゃんみな)
M16. LAST NIGHT
M17. CHOCOLATE
EC1. LADY
【ライブ情報】
日程:2018年10月14日(日)
開場:16:00 / 開演 17:00
会場:Zepp DiverCity(Tokyo)
オフィシャルHP先行特別価格:¥4,500-(税込/全自由/1Drink別)
U18割:¥4,000-(税込/全自由/1Drink別)
※U18割は公演当日にご本人、年齢の分かる身分証をお持ちください。
・オフィシャルHP先行
受付期間:2/25(日)20:00~3/7(水)23:59
http://eplus.jp/chanmina/
・問い合わせ
クリエイティブマン tel.03-3499-6669 (平日12:00-18:00)
http://www.creativeman.co.jp
さらに今回の渋谷O-EASTワンマンライブを記録した初のフォトブック『THE PRINCESS PROJECT #0』の制作も決定している。リハーサル風景や撮り下ろし写真などなどが一冊に。GWには購入者イベントも開催予定。
SUMMER SONIC 2018出演決定!
2018年8月18日(土)/8月19日(日)
*ちゃんみなは19日の出演になります。
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
OFFICIAL SITE: www.summersonic.com
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