18歳のラッパー、ちゃんみなが、3月27日に代官山UNITで初のワンマンライブ『ちゃんみな 1st Live 未成年〜To be QueeN〜』を開催した。本ライブは3月8日に発売したメジャー1stアルバム『未成年』のリリースを記念して開催されたライブで、演出のほとんどすべてをちゃんみな自身がプロデュース。LINE LIVEでも生配信され、のべ30万人もが視聴した。日本テレビ系『スッキリ!!』で「耳残り系女子」として紹介されたり、日本テレビ系『しゃべくり007』にゲスト出演するなど、今年大ブレイク間違いなしのちゃんみな初ワンマンライブの様子をレポートします。
Text_Sotaro Yamada
ちゃんみな1stLive『未成年〜To be QueeN〜』
会場となった代官山UNITはビルの地下二階にある。入場整理で外に溢れかえった人々の中をくぐりぬけ、暗い階段を降りると、オープニングSEとして使われているチャイコフスキー『くるみ割り人形 第三曲 金平糖の精の踊り』が聞こえて来た。自分が不思議の国に迷い込んでしったような軽い錯覚に陥る。ピンクの「CHANMINA」タオルを肩にかけた人々で溢れかえった場内には若くてキラキラした女性客が多い気がした。
照明が落ちると、満員のオーディエンスから歓声があがる。ステージ上のスクリーンにはディ○ニー風のPrincessのアニメーションが映し出され、「昔々、あるところに、世界一Microphoneが似合うPrincessがいました」というナレーションが流れ出す。Princessは、その歌声によって世界のバランスが崩れてしまうことを恐れた王様によって城の中に閉じ込められたのだそう。
もちろん、このPrincessとはちゃんみなのこと。自身を「閉じ込められたPrincess」と表現し、おとぎ話のような物語世界を提示することは、彼女のエンターテインメントに対する強いこだわりを感じる。
ステージがライトアップされると、中央に置かれた玉座(王の椅子)にはちゃんみなの姿が。その周囲を、オネエダンサーを含む男女6人のダンサーが固め、メジャーデビュー配信シングルとなった『FXXKER』で演奏がスタート。MVでも印象的なオネエダンサーのキレと迫力のあるダンスや、客席を突き刺すようなレーザーが放たれ、ド迫力な幕開けとなった。『FXXKER』は、ちゃんみながメジャーアーティストとしての意志を明確に表明した曲。ミーティアのインタビューでは「メジャーインディー関係なく、これからも私らしく、私自身がやりたいことをやる」と語っている(ミーティア「ちゃんみなが語った本音。『18歳、JKラッパー、未成年』」)。そういった彼女の意思表示を、満員のオーディエンスは大声援で受け取った。あまりのカッコ良さに、オーディエンスからは「ヤバい」「凄い」といった感嘆の声が止まらなかった。
(ちゃんみな『FXXKER』MV)
『FXXKER』のサビには何度も「FXXK!!」という言葉があるが、この「FXXK」には、Fワードとしての意味だけではなく、他にも様々な意味がある。たとえば、ミュージシャンになるという自分の夢を叶えた自身を祝福する意味での「最高」。あるいは、歌詞にあるように「From Japanの本物」を祝福する意味での「最高」。その意味では、この日のライブは盛大な祝福で始まったと言える。
(ちなみにレーザーは「フレームの変更」をテーマに空間演出を行うhuezチームが担当。水曜日のカンパネラやCharisma.com、DAOKOなどのライブも手がけている。めちゃくちゃカッコイイので、通な人は注目した方が良いかも)
3曲目の『Princess』を終えると最初のMCへ。
「ハーイ! みんな、顔見してよ。不思議の国へようこそ、とでも言っておきましょうか。城から逃げ出して来たPrincessっていう設定なんだけど、会いに来てくれてホントありがとう! まだまだ遊べますか?」とオーディエンスを煽る。
そして「序盤だお♡」とかわいらしくおどけ、4曲目の『Wonderland』へと演奏は続くのだが、『FXXKER』の迫力と「序盤だお♡」というMCのギャップに、多くのオーディエンスが心の中で「FXXK!!=最高かよ!!」と叫んだとか、叫ばなかったとか。
そして圧巻だったのが、すでに一部で話題になっている通り、ライブ中盤のダンスショー。DAOKO『ダイスキ Feat. TeddyLoid』を大胆にサンプリングした電子音の中で、和装姿のオネエダンサー二人が能のモチーフを取り入れたダンスを披露。ちゃんみなはといえば、花魁姿に着替え、羽の着いた扇子を揺らす。ステージ後方には東京の夜景が映し出され、続く曲はレゲエ調の『ナニモコワクナイ』。
この演出には度肝を抜かれた人も多いのでは!?
伝統的・古典的要素と現代的要素の融合は、日本の新しいカルチャーの形を明確に提示していた。
それにしても、ちゃんみなにこれほど花魁姿が似合うとは……。椎名林檎が『歌舞伎町の女王』を発表してから約20年(!)経つわけだが、ちゃんみなをこそ現代の歌舞伎町の女王と呼びたい、それくらい花魁姿がサマになっていた。
その後、「城を逃げ出したPrincessは自分の歌声に人を楽しませる力があると気付き、その歌声でQUEENになるため旅を続けた」とナレーションが入り、物語は続く。
『She’s Gone』をエモーショナルに熱唱し、親友・めっしを呼び込んで『未成年 Feat. めっし』を披露。二人で肩を組みながら歌う姿に、この日いちばんの歓声があがった。
MCを挟むと、オーディエンスにマイクを渡しての質問タイム。「髪の毛どこで染めてるんですか?」「カラコンどこの使ってるんですか?」といった質問から「別れた彼をもう一度振り向かせるためにはどうすればいい?」などの真剣な恋愛相談まで10個ほど幅広い質問が飛び、場内が賑やかになったところで、最後の質問はこの日唯一の男性からの質問。
「何カップですか?」
この質問へのちゃんみなのアンサーに対し、多くのオーディエンスが心の中で「FXXK!!=最高かよ!!」と叫んだとか、叫ばなかったとか。
質問タイムで「別れた彼をもう一度振り向かせるためにはどうしたらいい?」という質問をした女の子がいたが、「さっきの子に捧ぐよ」と言って『OVER』を歌い始め、ラストはMVも話題の『LADY』。
オーディエンスに手を伸ばし、一人一人の手を握りながら歌い切ると、「みんなのこと絶対忘れないよ、大好きだよ」と言ってステージを後にした。
(ちゃんみな『LADY』MV)
すぐに「アンコール! ハイッ!」という、若い女の子たちの黄色い声援が飛ぶ。
この時、客席後方にいた業界人の誰か(男)が「何このかわいいアンコール。これだけで白飯いっぱい食えるわ。最高かよ」と言ったとか、言わなかったとか。
「呼んだ?また来ちゃったよー」と言いながら再び登場したちゃんみな。頭には銀のティアラが輝いていた。この日登場した全ダンサー、そしてめっしを加えて『UR like Me』を歌い出すと、オーディエンスもみな手をあげ、ピースフルで多幸感溢れるエンディングとなった。
メジャーデビューして初のワンマンライブ、しかも本人プロデュースによるステージは、明らかに大成功だったと言えるだろう。ラップの文脈で登場したちゃんみなだったが、彼女の本質はシンガーでありエンターテイナーであることを強く印象付けた。開演前にスタッフの一人が「まるでG-DRAGONみたいですよ!期待してください!」と言っていたが、さもありなん。個人的にはマドンナやレディー・ガガを連想させられた。いずれにしろ、素晴らしいライブだった。
こうしてちゃんみなはJKラッパーを卒業し、女王への階段を登り始めたのだった。
最後に、『OVER』という曲について少しだけ触れたい。
「OVER」とはもちろん「終わり」を意味する。この曲がちゃんみな流の失恋ソングであることは、歌詞を読めば明らかだろう。
しかし、「OVER」にはもうひとつ意味がある。
すなわち、「打ち勝つ」。
「we are over」とは「私たちは終わり」であると同時に、「私たちは打ち勝つ」と解釈することもできる。
ちゃんみなの声が「over」とループする時、私たちは何かの「終わり」がもたらす悲しみに浸るだろう。だが同時に、人生の苦難に「打ち勝つ」ための勇気に触れることにもなる。
真の勇気とは、悲しみを自分の中で反復し、噛み砕いた後にのみ、得られるものであるーー。
ちゃんみなは私たちにそう教えてくれているようだ。
昨日は私のfirstワンマンライブに来てくれた方たち本当にありがとうございました!
本当に色んな人が来てたから、泣きっぱなしだったけど(笑)あんなに沢山の人が来てくれるなんて思わなかった、みんなにちゃんと感謝の気持ち伝わったかな?私の思い出の日にみんなが居てくれて良かった👑 pic.twitter.com/pkDNVvs7fe— ちゃんみな (@chanmina1014) 2017年3月28日
ちゃんみなワンマンライブお疲れ様でした
美奈のお陰で美奈と同じステージに立てて嬉しかったよありがとう🌹 pic.twitter.com/8i3hUrduJ3— めっし♀ (@messhi_milke) 2017年3月28日
ちゃんみな1st Live 未成年〜To be QueeN〜 @代官山UNIT
セットリスト
01.FXXKER
02.You can’t win me (REMIX)
03.Princess
04.Wonderland
05.BEATS BOY FRIEND
ダンスショーケース
06.ナニモコワクナイ
07.ダイキライFeat.ちゃんみな
08.She’s Gone
09.未成年 Feat.めっし
10.OVER
11.LADY
EN1.UR like ME
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