「私情なんてどうでも良い」
――まさか「解散」なんてワードが出るとは想像もしていませんでした。では『MEME』は、結構危ない状況を経て産まれた作品だったんですね。何かがひとつ違っていればこの作品はなかったし、Brian the Sunは解散していたかもしれない……。
小川 : 本当にそうだと思います。
森 : 表向きに「解散します」とか言ったわけではないし、そういうふうに聴いてほしいわけでもないけど、僕らとしては『MEME』はめっちゃ大事な作品になりました。
――あの……前回ミーティアでインタビューさせていただいた時は、みんなで楽しく鍋パーティーをしていましたよね。
白山 : あれが2017年の終わりでしたよね。あんなに楽しそうだったのに、次の年にはこんなことになっているという(笑)。
森 : 結局、コテンパンにされたという気持ちが自分のなかにあって。メジャーデビューして自信作を2枚出したのに、思っていたほど売れなかった。もちろん、売れる/売れないという発想ではつくっていないけど……今は、売れることに対する執着心がなくなりました。何かに対して歩み寄っていく姿勢より、自分たちがどういう存在であるかを提示することの方が大事だと思い知ったんです。いくらアニメのタイアップだからといって、聴く人にその曲の本質が伝わっていなかったら、それはモヤっとした掴みどころのないものとして受け取られてしまう。だから結構、しんどかったのかもしれないですね。
――2曲目の『まじでうるせえ』には、「初期衝動なんてもう 影も形もないよ」という歌詞があります。ちょっとドキっとする歌詞ですが、今の話に繋がる気がしました。
森 : 僕はずっと私情で音楽をやっていたんです。でも、そんなことはどうでも良いと思うようになって。バンドが解散しかけていたとか、家族が死んだとか、お客さんにとっては関係ない。こっちだって作品に対する酷評は聞き入れないくせに、そういう弱音を吐いた時だけ喜んでみんなのフォローを受け取るというのは、気持ち悪いじゃないですか。
――確かにそうかもしれません。
森 : やっと心からそう思えるようになったんです。だから今のモチベーションは目の前のことでしかなくて。練習して、録音して、それを聴いて、修正して。それがひたすら進んでいる感じです。
――作品と私情が関係ないと言い切れるのは、すごいことだと思いますが。
森 : ちゃんと歌って演奏して、という最低限のことすらままならないのに、「社会に対して物申す」みたいな姿勢になるは、客観的に見たら恥ずかしいですよね。多くを語らずにしっかりやること。それがいちばんパンクやなと思います。
このアルバムには続きがある
――収録曲の制作時期はバラバラですか?
森 : そうです。全部が同時進行で、だから思い入れも同じように強いです。リード曲を決めるのが難しすぎて、全国のラジオ局に「好きな曲を解禁してください」とお願いしました。このアルバムのリード曲は、みなさんに委ねます。
――なるほど、だからリリース1ヶ月前にして6曲も解禁されていたんですね。アルバム前半に収録された曲と後半に収録された曲では、少し雰囲気が違う気がしました。前半の楽曲には苛立ちが感じられるけど、後半の曲はのびのびつくられた感じがします。聴いていて「和解」という言葉が頭に浮かびました。
森 : 確かに、後半は少し大人びているかもしれないですね。ほぼすべて書き下ろしです。もうストックがないんですよ……。でもその都度書いた方が絶対良いものになるので。
――森さんはあまり楽曲を溜めずに、常に最新のものを出し切るタイプなんですね。
森 : そうですね。特にメジャーデビュー以降は毎回新しいことに挑戦していました。だからこそ、それを評価されずにインディーズの頃の曲の方が評価されると、普通にへこみます。
――「みんなインディーズの時の曲すっきやなぁーーーー!!」ってツイートしていたのも見ました(笑)。
森 : ぼそっと言っちゃいましたね、あれは書かんでよかったな(笑)。
みんなインディーズの時の曲すっきやなぁーーーー!!
ちゃんとライブでもしっかりやっていかないとな!
チャレラジあざしたぁ! https://t.co/gmSdymQ2OI— 森良太 (@payokki_new) January 22, 2019
――曲順も面白いアルバムになりましたよね。というのも、普通、アルバムの最後にはじんわり余韻を持たせる曲を置くことが多いと思うんです。でも『MEME』のラスト曲『MILK』は、パッと音を止めて、あえて余韻を与えないようにしている。
森 : その通りですね。それは続編を感じてほしかったからです。続きは僕らにもまだ見えてはいないけど、先が面白くなりそうな終わり方だと思いました。
白山 : アルバムをつくる時は、最後の曲から最初の曲に戻るまでの曲間にもこだわっているんです。『MILK』で映画が終わって、『Lonely Go!』がエンドロールではじまる、そんなイメージです。そう考えるとこの終わり方がベストに思えました。
――たとえば『僕らの未来を照らすためのうた』をラストに置くという選択肢もあったんじゃないですか? この曲はまさに未来へ向かう曲で、アルバムのラストらしい曲でもあると思います。
森 : そうですね。でもそれは、わりとみんなやりがちというか。
白山 : 今までの僕たちだったらそうしていたかもしれないです。でも今回は、やれることが増えたということや、同じような感情でも幅が広がっているということ、ありていに言えば「成長した」ということを見せたかったんです。『僕らの未来を照らすためのうた』で2回目の初期衝動を取り戻し、『MILK』で終わる。
――正しい選択だと思います。この終わり方には、どうしたって何らかのメッセージを感じざるを得ない。
小川 : 逆に言えば、『僕らの未来を照らすためのうた』のような曲がなければ『MILK』では終わられへんかったと思います。
Brian the Sun、海外に行く?
――早いもので、2019年も4分の1が終わりました。残りの4分の3、Brian the Sunはどんなふうに過ごしますか?
白山 : 前にミーティアさんの取材で「メンバー4人でバーベキューへ行く。それができなければ罰ゲームとして全員同じミサンガをつける」という約束をしましたよね。でも完全に約束を破ってしまったので(笑)、その埋め合わせを考える残り4分の3にしたいです。
森 : また約束してもうたやん。
――ミサンガはもういいので、ミーティアのTシャツ着てください(笑)。
森: : それで良いんじゃない?
白山: : それ着て何する?
森: : ライブちゃうん?
――『ブライアンフェス』はどうでしょう(笑)。で、物販でも売る(笑)。
小川: : おお、ごっついスポンサーがついた(笑)。真面目な話をすると、これからツアーがはじまるので、もうひとつ上のステップにあがったライブをしたいと思っています。
白山: : 去年も同じような時期にアルバムを出して春先にツアーが終わって、その次の動きがわからなくなってしまったんです。がゆえに、みんなそれぞれの活動をしてバラけてしまった。今回はせっかく一致団結してこんなに良いアルバムをつくれたので、歩みを止めない2019年にして、来年につなげていけるようにしたいです。
田中 : 僕は、今までと違うチャレンジができる1年になればと思います。たとえばBrian the Sunで海外に行ってライブする、とか。
小川 : これだけたくさんアニメの曲をやらせていただいているから、海外で待ってくれている方もたくさんいるしね。
白山 : 昨日さ、インスタでエルサルバドルのファンの人から英語でメッセージ来ててん。「あなたはすごくナイスなベースプレイヤーだ。早くエルサルバドルに来てくれ」って。
森 : エルサルバドルてどこ? 中米? すごい。ありえへんな。エルサルバドルの人の方が絶対リズム感良いやん。エルサルバドル行きたいわ。ていうかどこにでも行きたいよな。
白山 : 3人(白山、森、小川)はフィリピンに行ったことがあるんですけど、駿汰だけ海外を経験していないんですよね。
森 : それがグルーヴの差なんちゃう?
白山・小川 : (爆笑)
田中 : ……海外に、行きたいですっ!
Brian the Sun 3rd Album
2019.03.13
『MEME』
ESCL-5190 ¥2,700+税
[収録曲]
1.Lonely Go!(TVアニメ「BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS」OPテーマ)
2.まじでうるせえ
3.忘れていたこと
4.Re:mon
5.ファストワルツ
6.グリーンアルバム
7.夢の国
8.死
9.僕らの未来を照らすためのうた
10.MINT
11.MILK
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