観客と紡ぐBASI＆THE BASIC BANDライブレポ

偶然なのか、会場中が笑顔であふれたあとに始まった6曲目『笑み』。EVISBEATSによる最高に気持ちいいトラックとBASIによるキレのあるラップが融合した名曲。これまでのチルの時間から会場の雰囲気は一変し、間髪入れず続く3rdアルバム『RAP U』からの『Clap Ya Hands』で、ボルテージはMAXに近づく。この曲などはバンドによるサウンドでより良さが引き出されているいい例だと思う。

その後、突如フリースタイルがスタート。YouTubeやSNSで話題となっている『STUDIO韻シスト』を彷彿とさせるタイトなBASIのライミング。ここで『STUDIO韻シスト』のアルバムが間もなくボムされることも発表された。

(STUDIO韻シスト#6 鎮座DOPENESS&チプルソ)

そして「まだまだ寒い日が続くと思うのでキムチ鍋でも…」というフリから、BASIの1stアルバム『RAP AMAZING』収録のファンに愛される名曲『キムチ』。BASIのソロ初期の曲とあって、ファンにとってはライブで聴きたい一曲であり、もちろん口ずさめる人が多数。この曲を通して、BASIのこれまでと、ファンのこれまでがクロスオーバーするような感覚になり、会場中をPeaceな空気が包んだ。

続く『Fallin’』はiTunesで自身初のヒップホップチャート1位を獲得した曲。女性目線で書かれた切ないリリック。これこそ「あーわかる！」の局地とも言えるような曲で、BASIとともに歌う声には女性が多いように感じた。

そしてラストの『あなたには』。こちらも3rdアルバム『RAP U』、そしてEVISBEATSプロデュースによる曲。個人的に『あなたには』という曲が、BASIというラッパーのソロの歩みにおける大きな転換期となったと感じている。それはこの曲でBASIがいわゆるラッパーの“自分や地元へのレペゼン精神”から解放され、より自身の日常にまつわる言葉をリスナーに向けてラップするようになったと感じているからかもしれない。BASIというラッパーの等身大の言葉が多くのリスナーの心を掴み、幅広い層のフォロワーを生んだ…この曲で今日最大の合唱が起こったことに、それが現れているような気がした。

BASI & THE BASIC BANDのライブを観て思ったのは、観客とのグルーヴ感や、コール＆レスポンスを臨機応変に操れるバンドという形は、BASIに一番合っているのではないかということ。それほどいまのBASIは、観客との「一体感」や、ともに感じる「高揚感」を大切にしているように思える。

同時に現在のラップブームの中で、マイペースにみずからの気持ちいい音と言葉を追求し、気持ちいい仲間と、気持ちいい場所で奏で続けるBASIという純なラッパーは希有な存在に映る。また5thアルバムをみずからの「第一期集大成」と言ってしまうあたり、この“GOOD MUSIC”をこれから先もずっと聴かせてくれるんだろうな…という妙な確信を持った、代官山の夜だった。