ジブリファン必見の短編アニメーション5選
現在、日本では色々な種類のアニメーションを観ることができる。TVアニメや劇場アニメーションはもちろん、ミュージックビデオやドラマの中にもアニメーションは沢山ある。NHKで放送中の朝ドラ『なつぞら』のオープニング映像もアニメーションだ。そもそも、広瀬すず演じるヒロイン奥原なつのモデルは、アニメーターの奥山玲子だと言われている。
これほど日本人に身近なアニメーションだが、「短編アニメーション」というジャンルを好んで観る人の数は、残念ながら限られている。しかし、短編アニメーションの世界は、TVアニメや劇場アニメーションの世界と同じくらい豊饒であり、子供も大人も楽しんで観ることができる。それは時に、言葉の壁さえも軽々と越えてしまう。また、ネットで手軽に視聴できることも大きな魅力だ。
そこで今回は、YouTubeで観られる短編アニメーションの中から、ジブリ作品が好きな人ならきっと喜んでくれそうな作品を5作、ご紹介したい。キーワードは「温もり」と「ファンタジー」と「自然」。いずれも選りすぐりの傑作なので、少し手の空いたときにでも、じっくり鑑賞してみてほしい。
見えないものを見る 『Out of Sight』
『Out of Sight』
『Out of Sight』(『見えないところに』2010年)は台湾の学生が制作した作品だが、クオリティが非常に高く、発表当時、ネット上で話題になった。
この作品の素晴らしさは、まず何よりも、アニメーションという可視メディアにおいて、見えないものを描こうとした点にある。しかもそういう果敢な挑戦が、温もりのある絵柄やストーリーとうまく調和しており、完成度が高い。
ちなみに、『ナイトエンジェル』(1986年)というチェコの短編アニメーションが、すでに同様の挑戦をしている。こちらは、より幻想味が強い。観比べてみるのもいいだろう。
心躍るファンタジー 『The Lost Orchestra』
『The Lost Orchestra』
『The Lost Orchestra』(『消えたオーケストラ』2012年)はロシアの短編アニメーションだ。
1人の少年が、変てこで、愉快で、愛らしいオーケストラの団員たちと、仲良く暮らしている。ところが突然、彼らは離れ離れになってしまう。少年は団員たちを探しに、冒険の旅に出る。
彼らの住む世界は不思議と驚きに満ちており、観る者を飽きさせない。まるで子ども時代に夢見た物語のようだ。また、作画ものびやかで、心地よい。
『台風のノルダ』の監督作 『Wonder Garden』
『WONDER GARDEN』
『Wonder Garden』(2013年)は、スタジオコロリドの長編映画第1作『台風のノルダ』(2015年)の監督、新井陽次郎の作品だ。
キャラクターの企画、開発、デザインを行なう会社スパイラルキュートの人気キャラクター「Control Bearコントロールベア」とコラボし、迫力ある映像を作りあげた。
スタジオコロリドは劇場用アニメーション映画の他に、短編アニメーションも多く手掛けている。その多くはテレビCMなどで目にすることができるが、『Wonder Garden』はWEB限定公開ということもあり、知らない人も多いだろう。この機会に是非チェックしてみてほしい。
雨が恋しくなる 『The Song For Rain』
『The Song For Rain』
『The Song For Rain』(『雨に唄う』2016年)は、ほのぼのとしたタッチで描かれた、男の子とキツネの切ない交流の物語だ。
大胆な画面構成、鮮やかな明暗、降りつづく雨の音が抒情を強める。静かで、すこし寂しげな映画だが、これからの梅雨の季節にふさわしい、雨が恋しくなる佳品といえる。
ひたすらに美しい 『白鳥谷 Valley of White Birds』
『白鳥谷 Valley of White Birds』
『白鳥谷 Valley of White Birds』(『白鳥の谷』2017年)は、中国のアニメーションスタジオ「狼煙動画WolfSmoke」が制作した作品だ。2017年、世界4大アニメーション映画祭の1つ、アヌシー国際アニメーション映画祭にて、若い審査員が選ぶヤング審査員賞を受賞した。
水彩絵の具を散らした、絵画的でもあり写実的でもある背景美術の中を、人と人でないものが躍動する。術師の戦いもスリリングで、見応えがある。
短編とはいえ、約15分あるので、ネットで観るには長いと感じられるかもしれない。しかし、とりあえず再生してみてほしい。もしあなたが最初のカットの美しさに目を奪われたなら、15分は瞬く間に過ぎさるだろう。
以上、5つの短編アニメーションをご紹介してきた。個人的には、どれも「ジブリ的」な要素を感じるのだが、いかがだろうか。ネット上には様々なタイプの作品があるので、いずれまた、違うタイプの作品をご紹介したい。
(画像出典:Unsplash)
関連情報
・『奥山玲子画集 アニメーションと銅版画』
小田部羊一 監修 なみきたかし 編著
出版時期:2019年8月20日予定
価格:未定
体裁:A4 上製本 ページ数:320P
流通:主にネット通販 発行/発売:アニドウ・フィルム
アニドウ公式サイト
・『なつぞら』公式サイト
・スタジオコロリド公式サイト
・スパイラルキュート公式サイト
・ WolfSmoke(狼煙動画)Twitter
・アヌシー国際アニメーション映画祭2019
会期:2019年6月10日~6月15日
場所:アヌシー(フランス)
特集:日本アニメーション
日本アニメーション特集プレスリリース
アヌシー国際アニメーション映画祭公式サイト
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