ラブリーサマーちゃんとペギーズの出会い
――ラブサマちゃん、パッと買ってパッとプレゼントするところがイケメンですね。
ラブサマ : 男だったらモテますかね?
――絶対モテる。イケメンサマーちゃんです。プレゼントの仕方がすごく自然だし。
ゆうほ : 感謝されたくてやってるわけじゃないところが素敵ですよね。カッコ良い。
ラブサマ : ゆうほちゃんも、もらい上手だよね。だからこっちも楽しい気持ちでプレゼントできる。変に「え~、いいよお~」とか言わないで素直に喜んでくれる。その方がかわいいよね。
――2人が出会ったのは中学生の頃ですよね。お互いどういう印象でした?
ゆうほ : 互いに認識し合ったのは高校生になってからだけど、いつどういうきっかけで友だちになったのかは、ぼんやりしててあんまり覚えてない。
ラブサマ : 本当に仲良くなったのはわたしが大学に入ってからだもんね。
――高校時代からお互い音楽をやってたのに、そのあたりは意識しなかったのですか?
ゆうほ : わたしは勝手に意識してた。同じ学年でちゃんと曲つくってる人が他にいなかったし。でもわたし、高校の時はギザギザハートだったし、同じようなことをやってる人と仲良くできない時期だったから、高校生の時はあんまり話さなかったよね。
――ラブサマちゃんから見ても、高校時代のゆうほさんってギザギザハートでしたか?
ラブサマ : トゲトゲしてたとは思います。でもクラスも同じになったことがないし、接点もそんなになかったんですよね。わたしも中高は暗黒時代だったし。
――初めて知った時と今とで、お互いの印象は変わりました?
ラブサマ : 少し変わったと思います。わたしは高校生の頃、自尊心があまりになさすぎて、スクールカーストの最下位というか圏外にいたんです。ゆうほちゃんは、上位にいるんだか外にいるんだかわからないようなポジションだった気がします。だからペギーズの3人には恐れ入っていて、あんまり向き合えなかったんですよね。でも、良い曲をつくってるというのはずっと認識してました。ゆうほちゃんは、人と付き合うということに対して昔よりだいぶ丸くなったんじゃないかなと思います。
ゆうほ : 「ゆうほくらい性格変わった人は知らない」ってよく言われます。わたしは、印象が変わったというより、あの頃はラブサマちゃんのことを単によく知らなかった。中学生の頃のイメージだと、ラブサマちゃんは人と喋ることが好きじゃない人なのかなとか、隠れていたいタイプなのかな、と思ってました。
ラブサマ : そうだよね。トイレでごはん食べてたし。でもゆうほちゃんもそうじゃなかった?
ゆうほ : わたしもトイレでごはん食べてた。でもそれは悲しさを助長する行為だと思って、すぐにやめた。
ラブサマ : すごい。つよい。
ゆうほ : だからこっちから喋りかけるのも悪いかな、っていう感じだったし、共通の話題があることも知らなかったから。ラブサマちゃんは静かな子でした。こんなに興味深い内面をしてるとは思ってなかった。まずはベースのまあちゃん(石渡マキコ)がラブサマちゃんと仲良くなったんですよ。
ラブサマ : まあちゃんの小学校の同級生に、とけた電球っていうバンドの岩瀬くんっていう人がいるんですけど、岩瀬くんとわたしが仲良かったんです。で、岩瀬くんが「ラブサマの曲、キャッチーだし良い」って言ってくれてたら、まあちゃんが聴いてくれて。『My Sweet Chocolate Baby!!』っていうギャグみたいな曲を気に入ってくれて、2人で溝の口の『路じ』に白いカレーうどんを食べに行きました。
ゆうほ : それでまあちゃんが「面白い子だった!」って言ってて。わたしはラブサマちゃんが人をシャットダウンしてるタイプだと思い込んでたから意外に思って、もっと知りたい気持ちが強くなっていった。それで話してみたら、まず、すごい明るい子だし、めちゃめちゃ面白い子だった。それから、自分が思っていたよりもわたしたちのことを好きでいてくれてて、それが純粋に嬉しくて。こっちはライバル視というか、すごい音楽つくってる人だって意識していたから余計に嬉しかった。
ラブサマ : まあちゃんとカレーうどん食べに行ったのが高3の秋くらいでしたね。本格的に仲良くなったのは19歳くらい。こないだ、まあちゃんと釣りに行ってきたけど楽しかったな。
まあちゃんと釣り行ってきた
写真はまあちゃん選手が鯉を釣り上げた瞬間です まあちゃんめちゃくちゃ釣ってて凄かった pic.twitter.com/cofgYKx2N2— ラブリーサマーちゃん (@MAJIRESU_YAMETE) 2017年11月27日
――今度はお酒対談やりたいですね。ラブサマちゃんはデカイ酒愛好家だし、ゆうほさんもお酒大好きだし。あと、ゆうほさんは吉祥寺や神保町に限らず、東京のおいしいお店をたくさん知ってる。
ゆうほ : 食べログ有料会員なので(笑)。
ラブサマ : 実はわたしも食べログ有料会員! 月300円払って本当においしいものが食べられるんなら全然安いですよ。サクサクっと調べられるし。オフィシャルレビュアーの方が書いてることは信頼できるし。何ならわたしもオフィシャルレビュアーになりたい!
「ラブサマちゃんのおかげで、あたらしい自分を発見できた(ゆうほ)」
(the peggies『ちゅるりらサマフィッシュ〜ラブリーサマーちゃんRemix〜』ティザー映像)
――ラブサマちゃんはペギーズの『ちゅるりらサマフィッシュ』をリミックスしましたが、一緒に音楽をやるのは今回が初めてですよね。
ラブサマ : そうですね。本当に嬉しい。ゆうほちゃんほんとにありがとうね。
――リミックスは大変でした? 友だちだと距離が近いぶん、難しいような気もしますけど。
ラブサマ : 最初の打ち合わせで、できることやできないこと、得意なことや苦手なことを素直に伝えて確認し合ったので、あまり気負わずに気持ちよく作業できました。ペギーズのみんなが最初に提示してくれた構想はガン無視しちゃったんですけど。
ゆうほ : でもそれがわたしたちのなかにあったリミックスの概念とは違うものだったから、すごく面白かった。
街を歩きつつおいしそうなものがあると、即座に目を奪われるふたり
――以前ラブサマちゃんは、「ネオアコっぽいものは難しすぎるから、めったなことがない限りもうやらない」って言ってましたけど、めったなことが起きちゃったという感じですか?
ゆうほ : そんなこと言ってたんだ。
ラブサマ : そう。去年の今頃、『海を見に行こう』っていう渋谷系っぽい曲をつくって。とにかく渋谷系とかネオアコってドラムの手数が多いし、ちゃんとやろうとするとピアノもギターもベースもすごいテクニカルなことをやってるから、すっごい大変なんですよ。わたしそんなにピアノもギターもベースもうまくないし、渋谷系って真っ直ぐなロックじゃないから大変で。もうやらない!って思ってたんですけど、バカなので、忘れちゃってましたね(笑)。
(ラブリーサマーちゃん『FLY FLY FLY』MV+メジャー1stEP『人間の土地』全曲視聴。『海を見に行こう』は3.13〜)
ラブサマ : 『ちゅるりらサマフィッシュ』オリジナルver.との差別化を考えた時、少し別方向の音楽性を出した方が良いかなと思って。そしたら渋谷系というワードがパッと思い浮かんだ。あとは個人的に、渋谷系の夏の速い曲が好きだったからですね。
――参考にした曲はありますか?
ラブサマ : ROUND TABLEというネオ渋谷系バンドの『Puzzle』という曲と、The Smithsの『This Charming Man』のコーラスと、あとは全体的にadvantage Lucyを参考にしました。口ロロの『渚のシンデレラ』も参考にしたし、あとは相対性理論も、The Smith『This Charming Man』のコーラスに通ずるところがあると思うんですよ。
――すごい、即答でそんなにたくさん出てくるんですね。ゆうほさんはできあがった曲を聴いた時、ぶっちゃけどう思いました? 本人の前であえて聞きますけど。
ゆうほ : 普段あんまり渋谷系を聴かないからそういう意味でもびっくりしたし、自分の曲がアレンジひとつでこんなに別の曲に変わることが驚きでした。素晴らしいリミックスになったということはもちろん、自分の声や歌の振り幅をラブサマちゃんに見せてもらった気がして、あたらしい自分を発見できました。自分はこういうのも行けるんだ、っていう驚きがすごく嬉しかった。
ラブサマ : めっちゃ嬉しい。いちばん嬉しい言葉です。このリミックスをつくってる時、ゆうほちゃんのことを本当に天才だと思いました。わたしがどんなにトラックをいじくりまわそうが、メロと歌詞とボーカルの力がすごすぎるから、どうやっても良い曲になるんですよ。彼女のカリスマ性がボーカルトラック一本からビシバシ伝わってきて、ゆうほちゃんに完敗&乾杯しました。
フローズンヨールグルトを食べたとき、メロンを落としてショックを受けるラブサマちゃん
――『ちゅるりらサマフィッシュ』はもともと夏の曲ではあったけど、ラブサマちゃんのリミックスでさらに夏っぽい曲になりましたよね。
ゆうほ : 違う夏を感じますよね。『ちゅるりらサマフィッシュ』をつくったのは高校2年生の時で、「明るい曲をつくって」と言われてつくったんですけど、あの頃は本当にトゲトゲしてすべてを斜めから見ていたから「明るい曲って何だよ……マジで嫌なんだけど」とか思いながらつくったんです。だから、17歳の夏っぽさがあると思う。楽しさ1色の駆け抜ける爽快感と、俯瞰で見ると青春の切なさがある。それがラブサマちゃんのリミックスで22歳の夏休みっぽくなりました。少し落ち着いてはいるけど、楽しむところは楽しむみたいな。
ラブサマ : やったぁー!
ゆうほ : 違う夏になったのが本当にすごく嬉しい。さっきコーラスっていうワードが出たけど、コーラスでラブサマちゃん感がより一層出ていて、それがまた良いんですよ。
――あの「スイカわっしょい」コールは、ラブサマちゃんの声ですよね。
ゆうほ : そうです。ペギーズではつくれなかったサウンドになりました。
――ラブサマちゃんは以前「名前はその人を表さない」説を唱えていたけど、この曲はラブサマちゃんの名前らしい曲になりましたね。
ラブサマ : たしかに。これまでのわたしの曲は、冬に聴くような曲や、ベッドルームで聴くような曲が多くて。太陽浴びて風を感じるような曲は初めてかもしれない。
「嬉しくて泣いちゃう(ラブサマ)」
――最後に、お互いの好きな部分、リスペクトする部分を教えてください。
ラブサマ : 初めてペギーズのライブを観たのは中学生の頃だったんですけど、その年齢の子がつくった曲なんてたかが知れてると思うじゃないですか。でも全然違った。『アイラブユー』とか『16の夏』とか『金曜日の夜』とか、「あ、この人、普通の人とは完全に違うんだな」って見せつけられちゃって。
(北澤ゆうほ『金曜日の夜』)
ラブサマ : メロと声と歌詞がポップなんですよね。ポップのなかに個性をまぜるのがうまい。誰もがポップと個性の両立に悩むと思うんですけど、ゆうほちゃんはその2つがすっごいバランス良く成立している。どの曲のどの部分を聴いても完全にゆうほちゃん節だってわかる。それでいてめちゃめちゃポップで、1度聴いたら覚えちゃう。それは本当にすごいことです。ここ数年のゆうほちゃんはパワーポップにハマってると思うんですけど、メロと声と歌詞と歌のポップさの上に、確固たる音楽性のベクトルを提示してきている感じがして。そのベクトルの選び方がセンスに溢れている。最近のペギーズはめっちゃバッキバキにロックでオルタナ全開でカッコ良いですよね。
ゆうほ : 嬉しい~!
ラブサマ : 音楽を抜きにして、人として、友だちとしては、素直なところが素敵だなと思います。いや、素直という言葉は少し違うかな、自己肯定の仕方が見ていて気持ち良い。うまく言えないけど。
ゆうほ : それは自分でも気を付けてることで。自分の嫌な部分を他人に見せるのは弱点を曝していることだと思うんです。なるべく「かわいそう」とか「弱い」とか思われたくないっていう、謎のプライドがある。謙虚が美徳の日本では、自信がある人に対して悪いイメージを持ちがちだけど、そういうものに負けずに堂々と生きていたい。本当は自分が弱いことをわかってるからこそ、あんまり人には弱いところを見せたくないんです。たぶん、わたしは自分のことがすごく好きなんですよね。だからこそ自分に対する理想も高い。好きな人に対してイライラしちゃうのと同じで、「なんでわたしってこうなの? もっとがんばろうよ、自分」って思っちゃう。自分が好きだという気持ちがプラスに作用するということを、自分で証明したいと思ってます。
ラブサマ : 自分のことが大好きだからこそ認められないっていうのはすごくわかるなあ。
ゆうほ : ラブサマちゃんは、わたしにないものをたくさん持ってるよね。音楽にすごく詳しいし、曲を聴いているとそれがすごくわかる。ペギーズの曲にも音楽性はちゃんとあるんだけど、パッと聴いた感じではあんまり伝わらないタイプのバンドだと思うんです。ラブサマちゃんは1曲1曲それぞれにルーツと音楽性がはっきりとあって、音楽マニアからも好かれるものをつくってる。そこをまず尊敬しています。それから、声が素敵だなと思う。初めてラブサマちゃんの歌を聴いた時はほんとびっくりした。ウィスパーボイスって芯がない歌になることが多いけど、ラブサマちゃんは全然そうじゃない。ライブでも歌がちゃんといちばん上に来て、野外でもしっかり響き渡る。透き通ってるのにしっかりしているんです。わたしはストレートに歌うタイプだから、ラブサマちゃんの歌い方をすごく魅力的に感じる。ボーカルとしてもすごく好きです。
――人としてはどうでしょう?
ゆうほ : 人としては、マジで面白い(笑)。ラブサマちゃんはいつも正直なんです。「これ言ったら嫌われるかな」とか普通は考えちゃうんだけど、そういうハードルがないというか。思考から言葉になるまでの距離が短い。
ラブサマ : あけすけで、リミッターがないんですよね。
ゆうほ : それって、人によってはリスキーだと思うんです。でもラブサマちゃんはすごく愛されてる。そのリスキーさがちゃんとキャラとして成立する佇まいやユーモアがあるんです。リミッターのなさが、ちゃんとエンタメになってるんですよね。
ラブサマ : ひえ~~。めっちゃ嬉しいこと言ってくれるじゃん~~(嬉)。
ゆうほ : だから何を言っても面白い。TwitterとかInstagramとかもマジで面白いし、やばい人なんだと思う(笑)。そういう人がわたしは好きだから、見てても面白いし、一緒にいるとなお面白い。友だちだからたまに心配になって「それを曝してはいけないっ……!」とか思うこともあるけど、その危うさよりも人間としての面白さの方が勝ってると思う。
ラブサマ : 嬉しくて泣いちゃうよ〜。
the peggies 最新リリース情報
なつめきサマーEP
2018.07.05/配信限定
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2.かみさま
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