石崎ひゅーいのこれまでとこれからが見えるベストアルバム
――なぜ、このタイミングでベストアルバムをつくろうと思ったのでしょう。
ひゅーい : 話は前からあったんですけど、自分のなかではベストアルバムって、ヒット曲がたくさん入っているイメージだったんです。だから畏れ多かったんですよね。でも、新曲を入れて、弾き語りの成長過程もアルバムに収めて(※2017年は弾き語りを中心に活動していた)、これまでとこれからが見えるような1枚にしようという話になって、それはいいなと。アルバムの最後に『ピリオド』という新曲を置いたのは、これまでの5年半の活動を一旦ここで区切るというイメージです。
――収録曲はファン投票で決めていますよね。
ひゅーい : 自分たちで選ぶと偏ると思ったんです。それから、自分で産みだした曲は全て等しく大切なので、自分では選べない。そして何より大切なのは、これは区切りのアルバムなので、いままで石崎ひゅーいを見てくれていたみんなでつくりたいという気持ちが強くありました。
――ファン投票の結果を見てどう思いましたか? 最近の曲もあれば、かなり初期の曲もあります。
ひゅーい : たとえば『ガールフレンド』は、弾き語りのためにつくった曲。そういう初期の曲が入っていることは嬉しいです。全体を見たときに、すごくわかりやすい形で石崎ひゅーいというものを提示できる選曲になっていたんですよ。投票してくれた方々がすごく悩んで真剣に考えてくれたことが伝わってきて、優しさを感じました。「わかってるなあ〜」と(笑)。
――『アタラズモトオカラズ』以前は、孤独や悲しみに引き寄せられて曲をつくっていたそうですね。プロデューサーの須藤晃さんは『アタラズモトオカラズ』制作の際、「ひゅーいに産みの喜びを教えたかった」という趣旨の発言をしています。同作を機に、創作のモードは変わりましたか?
ひゅーい : だいぶ変わりました。『アタラズモトオカラズ』をつくり終えた後はからっぽになってしまって。やっぱり、磨り減っていたんですよね。これまではそういう自分を騙し騙しやっていたんだなと気付いた。だから一度、精算したい気持ちがあったんです。
なんだかんだ言って、自分は曲をポンポンつくるタイプなんですが、それがストップした感じもしていて。そういうことは今までもあったけど、「寝ればまた出てくるでしょ」って軽く考えていた。でも次のフェーズに行くためには、それじゃダメだなと思うようになって。シンガーソングライターとして、もっと肉付けしたりパワーアップしたりしなきゃいけない。そういうことを今は見つめ直しています。
新曲『ピリオド』について
――新曲『ピリオド』は、いつ頃つくった曲でしょう。
ひゅーい : 2017年の終わりから2018年の1月頃なので、いちばん新しいホットな曲です。この曲は恋の終わりについて歌っているんですけど、シンガーソングライターとしてのいまの自分の状態がそれに近いと思っていて。最初は「春」というテーマでつくっていたんです。でも途中から、この曲でいままでの5年半にピリオドが打てるような、そんな曲にしようと考えるようになりました。
――これまでの5年半を第1章とするならば、それはどんな時間でしたか?
ひゅーい : 苦しみと喜び、同じくらいあったのかなあ。いや、どうだろう……。そこまで苦しくはなかったのかもしれない。どちらかと言えば順調にやらせてもらっていて、だからこそ自分のソングライティングをそこまで深く見つめ直す機会がなかった。今からが、その時だと思います。
『ピリオド』では、これまでとは違う歌詞の書き方をしました。自分のなかから出てきた言葉をそのまま作品にするのではなくて、それがどうやったら聴いてくれる人により伝わるのか、心に響くのか、そういうことを考える作業を付け足したんです。やったことのない書き方だったのですごく時間がかかりました。もしかしたらこれが苦しみなのかもしれないけど、今の自分にはそういうことが必要だと思っています。
「女の子にキャーキャー言われて『これだ!』と思った」
――あらためて、ひゅーいさんの言葉のルーツはどこにあると思いますか。
ひゅーい : やっぱり母親ですね。すごく芸術的な人だったんです。母さんとの会話に影響を受けたし、芸術のことも教わったし、ファンタジー的なものをたくさん見せられました。稲垣足穂さんの小説『一千一秒物語』とか。デヴィッド・ボウイの『ZIGGY STARDUST』なんてモロにファンタジーですしね。ある日いきなり、『ZIGGY STARDUST』に収録されている『Rock’n Roll Suicide』の歌詞が家の窓に彫られていたこともありました。今も家の窓ガラスにはその歌詞が彫られたままです。変わってますよね。そんな母親でした。
――母親以外に運命的な出会いがあったとしたら、それは何でしょう?
ひゅーい : 月並みですけど、やっぱり音楽との出会いですね。最初は母親に演劇をやらされていたんです。演劇は楽しかったし、小さい頃は、自分は将来俳優になると思っていました。でも中学3年の頃にバンドを始めたら、女の子にすごいキャーキャー言われて「これだ!」と思いました。それで母親に「母さんは芝居をやってほしいだろうけど、音楽をやる」って言いました。だから中学3年で音楽と出会ったことが運命の出会いですね。
――映画『アズミ・ハルコは行方不明』のひゅーいさんは、色気があって素晴らしかったです。結果的に音楽と芝居の両方をやるようになって、お母さんもきっと喜んでいるでしょうね。
ひゅーい : そうだと嬉しいですね。
石崎ひゅーい ベストアルバム『Huwie Best』
ESCL-5043 ¥2,685(税別)
収録曲
1.第三惑星交響曲
2.ファンタジックレディオ
3.夜間飛行(テレビ東京系ドラマ24園子温総指揮 「みんな!エスパーだよ!」エンディング・テーマ)
4.ピノとアメリ(東京系アニメーション 「NARUTO-ナルト- 疾風伝」 7月クールエンディング・テーマ)
5.ひまわり畑の夜
6.ガールフレンド
7.ピーナッツバター(連続ドラマ『新解釈・日本史』2014.4月~6 MBS・TBS系列にて放送)
8.星をつかまえて(ジャンプスペシャルアニメフェスタ2014上映作品アニメ「ハイキュー!! リエーフ見参」 エンディング・テーマ)
9.1983バックパッカーズ
10.おっぱい
11.常識新録(2012.11.21発売 ライブDVD&Bluray-Disc「キミがいないLIVE」収録)
12.僕がいるぞ!(テレビ東京系ドラマ24アニメ「ハイキュー!! リエーフ見参」 エンディング・テーマ)
13.僕だけの楽園
14.花瓶の花(ショートショートフィルムフェスティバル& アジア2016ミュージックビデオ部門優秀賞受賞)
15.ピリオド(新曲)
16.花瓶の花(Acoustic Version)
17.夜間飛行(Acoustic Version)
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