永原真夏コラム、今回は座談会!
やっほーこんにちわ!永原真夏です。
今回の立ち話は、先日行った展覧会「永遠の恋人」チームでの座談会(立ち話ではもうない)をお送りいたします。
私がディレクションを務める雑貨ブランド<RinRin>と、その相方ユニと、作家の猿田妃奈子ちゃんと、インタビュアのKさんと、楽しく熱く語っていたら1万字を超えてしまいました。
音楽はもちろん、詩のこと、ものづくりのこと、恋のこと、たーーーっぷり語りましたので、ぜひ読んでみてね。
それではいってみよう!
<RinRin>を始めることになったきっかけ
――早速ですが、永原(以下:真夏)さんと李潤希(以下:ユニ)さんが始められた雑貨ユニット<RinRin>が始まることになったきっかけからおたずねしていきます。
真夏 : 私とユニは元々高校の同級生だったんですが、当時は一緒に帰ったりするほど特別仲が良いわけではなかったんです。趣味が近いことはなんとなく知っていたけどね。
ユニ : 真夏が高校に来なかったからキッカケが無かったってのもあるよ!(笑)
真夏 : 笑、ユニは、当時からおしゃれな子だったので目立ってたんですよ。性格もツンケンしててね。
――お二人の距離が近づいたきっかけはなんだったんでしょうか。
ユニ : 歩里(工藤歩里:永原真夏とともにバンド「SEBASTIAN X」「音沙汰」などで活躍)と私が幼馴染で、そこで歩里とバンドを組んでいた真夏と仲良くなったんです。
真夏 : そこから音楽とかいろんな話をするようになって、たまにお茶したりご飯したり。その流れが20代前半からずっと続いていたんです。学校に行かなかったことが功を奏したかもしれない(笑)。
ユニ : 大人になってからだね。
妃奈子 : でもいるよね、そういう友達。
真夏 : そうして私はSEBASTIAN Xのグッズでイラストを描いてもらったり、ユニはTHE BOHEMIANSやgo!go!vanillasのバンドグッズのデザインもやるようになっていって。ライブハウスに、共通の界隈みたいなのがずっとあったんです。それが人間関係の始まりではあったかなと思います。そのあと定期的に、雑貨が好きな共通項もあったので、「一緒に何かやりたいね」といった話を呑気にしていて。
ユニ : 具体的に話して動くっていうより、「あの国に行こう、あそこで遊ぼう」って話す延長線でずっと話をしていたよね。でもある日「あ、本気だ」と感じた瞬間があったんです。
真夏 : でもそれも、いつものお茶の流れだったんだよね...
――いつものルーティンの中でお互いの「ここだ!」というタイミングが一致したんですね。
ユニ : 自然に生まれてしまった感というか(笑)。
真夏 : 唯一ちゃんと決めたのが、第1回の「RinRin Market」の時で、そのタイミングを決め打ちとして始めました。
最初の「RinRin MARKET」の開催
――いろんな方々が幅広く参加されていた企画だったと思います。段階を踏んで準備しましたか?
真夏、ユニ : めちゃくちゃ段階を踏んで準備しました!その時ちょうど台風(ハギビス)も来てて...。
真夏 : あの時は<RinRin>以外の出店者の方もいるし、革製品という決してライトではない素材で商品を作っていたし、準備を丁寧にしていましたが、始まりは非常にぬるっとしていました。
ユニ : 会場を決めた時にはまだ、革のアイテムを作るって決めてなくて...夏くらいに工場に行ったよね?
真夏 : そうそう、ツアーで岡山に行っていた時だから、5月くらいに電話して決めたんだよね。
ユニ : 5ヶ月くらいあればなんとかなるかなと思ってたんですけど、あっという間だったね。
真夏 : 本当にあっという間だったね。
猿田妃奈子さんとコラボレーションする契機は? 3人の出会いは?
――初回「RinRin MARKET」を終え、今回の会場「MADO」で行われた『RinRin×Hinaco Saruta Exhibition「永遠の恋人」』に猿田妃奈子さんが加わり、展覧会最終日の夜には既に3人で次の展望も考えていたのが面白く感じました。そんなシンパシーを感じる皆様の繋がりのきっかけはなんだったんでしょうか。
真夏 : 出会いは友人の紹介だったんです。その時に「二人はきっと気が合うよ」って言われたんですけど、秒で仲良くなれるなんて最初は想像できない。でも、彼女がTwitterに載せている作品がとっても素敵で。そこから何回もお茶をして、会話を重ねて、仲良くなっていったんです。初回の「RinRin MARKET」にも参加してもらって。<RinRin>と妃奈子ちゃんという、接続点があるわけではない作家性が合わさると面白いんじゃないかなと思いついて、ユニに相談したんです。そしたらユニが「やろう!」っていってくれて。
――3人で交流を深めていく中で、今回テーマとして掲げていた「永遠の恋人」を決めたんでしょうか。
ユニ : もともとは、バレンタインフェアのお誘いをもらってたんです。当初は、今まで作ってきたものをフェア内で展開して頂くというお話だったんですけど、バレンタインの時期が過ぎてもちゃんと届く形がいいのかな? という話を会場のMADOさんとも相談しながら、今回の展示という形になりました。
真夏 : 近いタイミングで妃奈子ちゃんとも打ち合わせをしていて、せっかくのコラボレーションだし、ちょっと違った形でできればなと思って。
――『RinRin×Hinaco Saruta Exhibition「永遠の恋人」』は初回とはまた異なる形で、<テーマの中のものを体感してもらう>ことに重きを置かれたということなんですね。
『RinRin×Hinaco Saruta Exhibition「永遠の恋人」』
――皆様が準備や開催をするまでの間で、今回の企画展示で面白かったことはなんでしょうか。
真夏 : 全部!
ユニ : とりあえず3人で会った時はずっと恋話してたよね。
妃奈子 : ちゃんと真面目に話してても、最終的には愛の話になってたよね。
全員 : そうそう!!面白かったよね!!
真夏 : プロダクトの話は全然進まなかったよね!
――その時の話が必然的に今回のテーマにつながったということなんですね。
真夏 : それ、めっちゃあります!
妃奈子 : みんなで作って話しているうちに、自然な共通点ができて。
真夏 : (ユニさんのものまねを挟みながら)「でもさ〜でもさ〜」を繰り返してて。常に誰かが恋話をしているなっていう思い出はあります。
ユニ : バレンタインを控えていた世の事情も相まって、ひなちゃんがこの写真を作ってくれた時も2月くらいを想定している形でした。その時に「じゃあ恋だよね」とテーマが決まっていったような思い出があります。どんな表現もそうであるように、この活動もある一面では政治的なことではありますが、何か意思表明をするというよりは、恋とは人の人との関係性である、ということを伝えられたのではないかと思っています。多分バレンタインじゃなくても今回のテーマになったんじゃないかな?
妃奈子 : そう思う!
真夏 : もともと私自身、恋話をする習慣があまりなくて。今回のコラボレーションを通して、恋話をする「余白」が生まれる友達がいるのって本当に素敵だなと思って。誰かが「LINEが返ってこない」と言ったら「じゃあ等間隔の時間でラインを返してみるとか?!」って誰かが返す。そういった対話が、創作活動においては単純な原動力にもなるし、なおかつ最小単位で世界のことを知ることができるきっかけだったり、考えるヒントにもなるなって。多様性みたいな考え方が広がって、ソロ活動(人生の)しやすくなる社会には全面的に賛同するけれど、一方で、誰かを思って切なくなったり難しくなったりすることって、特別素敵なことだなと思っているんです。「好きな人がいたとしたならば」―それはどんな時でも素晴らしいことなんじゃないかという価値観を、文化の中に残しておきたいなと思ったんです。
ユニ・妃奈子 : しみじみと(笑)。
妃奈子 : でも本当にそうだよね。
真夏 : アートやカルチャーはいま、個人と多様性の方にフォーカスが絞られていて。「恋愛」もナイーブなテーマなんですけど。
ユニ : ドメスティックな感じって思われがちだよね。
真夏 : 今回のテーマになっている「ピンク」「ハートの形」「恋」「スイーツ」「クリーム」といったものは、前時代的な女性のアイコンでもありますけど、それも抱きしめて、すべて向かい合ってみようとふんどしを締めたんです。展示では、そういったアイコンを新しい形で残していければいいなと思いました。
妃奈子 : 今回の展示って、一層目で見ると特に「恋愛」に見えるけど。今回のテーマ「恋の美しさだけではない部分」について改めて思ったけど、世の中がクリーンになってきてて、「絶対に間違えちゃいけない」みたいになってるじゃないですか? みんな100%の日なんてなくて、大きな間違いとかもあるけど、みんな毎日間違えるから、「間違えていいよ」って言いたいなと思ったんですよね。そういう場所を作っていくことや魂を持った空間を、雑貨に落とし込んだ上でポップに届けたいなと思っていました。ファンシーを盾にして。恋とかじゃなくて、「間違えていいよ」ってことを伝えるようにしていました。
真夏 : 今回のメインビジュアルも実は三角関係になっていて。それぞれにカメラのピントが合ってる別バージョンもあるんです。この写真、いろいろ思うことがあって、ひなちゃんが「誰かが幸せな時ってさ、誰かが幸せじゃないんだよね」って言ってたのが印象的で。そうだよな、本当に。と思って。
妃奈子 : みんなハッピーエンドって本当に難しい。
ユニ : 甘いだけにしちゃったら余白がなくて意味がないんですよね。可愛いは正しいんですけど、それだからこそ、気をつかいながら、言語化したポエムや、飾り方によってテーマをピリッとさせていくことをみんなで共有していたかなと思います。
妃奈子 : そうだね。
――裏のテーマとしてみなさんが考えてたことも伝わります。実際に見た方々からの受け取り方も多種多様ですよね。
ユニ : 展覧会でのポエムは、「恋」括りで読まないと恋のこととはわからない書き方がされているなと思っていて。もちろん恋ベースで見て良いものではありますけど、例えば自分が超フリーで、心が恋してない状態...、仕事ばっかりしてると、男の子のこと考える余裕とかって無い...。
真夏 : 本当それ!むしろ入ってきたらイライラするよね!笑
ユニ : それが、解釈の余白があることで「まあいいや」とかなるかもしれないし。そんな時に入ってくる言葉でピリッとして、「そうだった!そうだった!」と持ち帰って考えられるようになっていた展示だったし、激甘だからこそ解説が増えていった。
妃奈子 : 物語みたいなね。
ユニ : 別に「恋は美しいものじゃない」ってことを伝えたいのではなくてね。
真夏 : 美しさと残酷さと、尊さと、単純に好きっていう気持ちって一緒じゃない?!!って気がついて...
一同 : 笑
真夏 : 日常を生きてると「大好き」「むかつく」「悲しい」とか、感情の一つにフォーカスを絞りやすいけど、恋には全部あって。それに打ちひしがれながら文章を書きました。あとなんか、超個人的ですが、阿部芙蓉美さんの「沈黙の恋人」という楽曲が肝になってて。
ユニ・妃奈子 : へー!
真夏 : 今回この展覧会に向けて、友人たちの話を聞いたりしながら、「恋」のモードに自分を自覚的にしようとしてきて。「恋」をテーマとしたプレイリストを個人的に作ってたんです。この曲には、「こういうことを、ユニと妃奈子ちゃんと私は共有してもってるな」って思ったことがたくさんあって。サビにある「正しい言葉を捨て去ったあとで抱きしめてよ」「散々なこの想いを君と交わせたなら嬉しいよ」「正しい世界が消え去った夜に待ち合わせてさあ行こう」って感覚や景色を、自分の言葉で、雑貨とポエトリーとともに伝えて。一番難しくない形で、口語体みたいに噛み砕いて伝えていくのはどうしたらいいか、を考えながら作りました。
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