今年でバンド結成18年目を迎える凛として時雨のフロントマンであるTKのソロプロジェクト、TK from 凛として時雨。スリーピースというバンド形態とは異なる、TKが持つ独自のアイデンティティと言葉、創造性を共鳴させた新しいジャンルの音色は、従来のファンだけでなく多くのリスナーを魅了してきた。今年春には約3年半ぶりとなるフルアルバムのリリースが決定し、4月からは全国ツアーもスタートするTK。繊細な歌声と、圧倒的なパフォーマンス力を兼ね備え、周りを引き込む不思議な魅力をまとう彼に、いま感じているリアルな心境を聞いた。
結局は楽器を手にすると、衝動的なもの以外は生まれてこないと思う。
ー今回4枚目のフルアルバムをリリースすることになりましたが、前作のアルバムから3年半の制作期間中、ご自身が印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。
今回収録してる楽曲「katharsis」のレコーディングのためにベルリンへ行った時、レコーディングの前日に森の中で撮影していたのですが、『天空の城ラピュタ』に出てくるような神秘的な場所があったんです。そこにジャンプして降りたら、底なし沼みたいな地面で…事前にカメラやバッグはマネージャーに渡してあったのですが、あの時は一瞬死ぬかと思いましたね(笑)。
ーそんなハプニングがあったんですね(笑)。アルバム全体の雰囲気、曲順の流れでイメージしたものはありますか?
常に自分の内面を削ぎ落とすような感覚で曲作りをするので、曲が完成した時に初めてその形を実感することが多いですね。僕は流れをイメージできるほど器用でもなく、結局は楽器を手にすると、衝動的なもの以外は生まれてこないと思います。
ー今まで海外でのレコーディングも何回かされている印象を受けますが、今回のレコーディングでも国外で制作した曲があれば教えてください。またその土地の空気、生活リズムや自身の精神面で、国内でのレコーディングと変わる点はありますか?
ヨーロッパでレコーディングするときって、街で暮らしている人たちと同じ時間軸で朝ごはんを食べて、作業して、寝るっていう生活のルーティンが実現できるので、やっと人間らしくなれる感じはありますね。ドラムのBOBOにはずっと時差ボケしてるって言われるのですが(笑)。もともと姉がイギリスに住んでいた頃、よく遊びに行っていたことが僕が作る音楽の原風景にもなっているので、とても自然にインスピレーションが湧いてくるんです。もちろん、一番好きなドラムサウンドが録れるというのが一番ですが。
ーアルバムタイトルはまだ未定ということですが、制作過程の段階からいくつかタイトル候補が頭に浮かぶことがありますか?完成後に決めることが多いですか?
どちらの場合もありますが、ずっと頭の中で模索しているような状態ですね。本当は身近な場所にあるはずなのに、近すぎて見つけられていない気になってしまうんです。
曲が生まれるプロセスは書下ろしもオリジナルも同じ。
ー「蝶の飛ぶ水槽」はテレビアニメ『pet』の書下ろし新曲としてリリースされましたが、ご自身のなかでどういったイメージで制作に及んだのか、また『pet』の原作からのファン、視聴者に伝えたかったメッセージなどあれば教えてください。
作品から着想を得たものがすべてでした。あそこまでの超大作になるとは思ってもみなかったのですが、構成を練っていくと自然と足りないものが見えてくるんです。その分時間はかかってしまうけど、目の前にしっかりと何かが現れるまではっきりと見えないタイプなので、組曲みたいになっちゃうんでしょうね(笑)。
ーこれまでも「凛として時雨」として数々のタイアップ曲を手掛けてきたかと思いますが、実際書下ろしテーマ曲と、ご自身が作り出すオリジナル曲の制作とは異なる部分が多いですか?
やはり何もない0の状態から曲を生み出すのと、そこに1つのストーリーが存在している状態で楽曲製作するのでは、脳の働き方から変わってきますね。ただストーリーの内容がすっと体の中に入ってきて、自分の奥にある感情とシンクロする瞬間があるんです。それを見つけるまでが大変なのですが、曲が生まれるプロセスは書下ろしもオリジナルも一緒なんだなと感じますね。
ー「蝶の飛ぶ水槽」のPVでは、雪、海といった “水”というシチュエーションの中で激しく舞うコンテンポラリーダンスが強く印象に残ったのですが、楽曲に合わせるビジュアルという点で何かイメージしたことはありますか?
今回は水のイメージと共に、『pet』のアニメの中に出てくる2つの世界を行き来するイメージを具現化してほしいとオファーをしました。曲自体も長いので、視覚的に美しく描ききれるのか心配な部分もありましたが、あえて僕が出演しない方向でPV制作をお任せしてみました。いつも僕自身がディレクション面で細かく入り込んでしまうので、客観的に作品を見てみたかったのもありますね。
ーなるほど。では今期のツアーに向けてどんな準備をされていますか?
まだ曲を仕上げてる最中なのですが、無事に完成させて生きて迎えられたらと思います(笑)。
ー最後に、デジタルが主流のいま、ライブツアーというのはアーティストにとってもリスナーと蜜にコミュニケーションが取れる貴重なツールだと思います。TKさんは、このアルバムリリースツアーをどんなものにしようと考えていますか?
今回のアルバムではバリエーションに富んだ楽曲が盛り込まれているので、今までの表現にはないものをライブで見せられたら良いなと思っています。色々なものが現れては、消えていく中での一瞬を切り取るために、“ライブ” というものが存在しているということをリスナーのみなさんと共有できたら嬉しいですね。僕にとっても、その意味を感じられるのはライブの一瞬だけなんです。
【リリース情報】
TK from 凛として時雨 4th Album 『彩脳』
2020年4月15日発売
・初回限定盤(2CD)…AICL-3886~7 ¥4,545+税
・通常盤…AICL-3888 ¥3,000+税
【ライブ情報】
TK from 凛として時雨 彩脳 TOUR 2020
4/22(水)19:15 東京・LIQUIDROOM
4/25(土)18:00 福岡DRUM LOGOS
4/26(日)18:00 広島クラブクアトロ
4/29(水・祝)18:00 神奈川・KT Zepp Yokohama
5/9(土)18:00 石川・金沢EIGHT HALL
5/17(日)18:00 北海道・PENNY LANE24
5/23(土)18:00 大阪・なんばHatch
5/24(日)17:00 香川・高松MONSTER
5/29(金)19:15 愛知・ダイアモンドホール
5/31(日)18:00 宮城・仙台Rensa
6/4(木)19:15 東京・中野サンプラザホール
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