BRADIOの出自は、やはりライブハウスであり、会場の大小や立ちや座り関係なく、その音楽が鳴り出せば否応なく彼らの世界へと惹き込まれ、気づけばみんながハッピーな場所へと至っている…。そんな生粋のライヴエンタテインメントバンドの在り方を改めて体感できた一夜でもあった。
Photography_Masahiro Yamada
Text_Ikeda Scao Kazuhiro
Edit_Shu Nissen
すっかりライヴハウス化されてしまったEX THEATER
BRADIOが5月から敢行している『47都道府県ツアー “IVVII Funky Tour” 』。全49公演にも及ぶ自身最長最多となる同ツアーの折り返し地点とも言える24回目のライヴが、7月3日に東京はEX THEATER ROPPONGIにて行われた。同ツアーは全公演が対バン形式で行われたもの。ここまでかなり細かく、しかもあえて小さな会場にて行われてきた感がある。そんな中、ここEX THEATER ROPPONGIは同ツアー最大規模の会場。にも関わらず、その熱量はこれまでの他の会場と遜色のないものであった。ここまで培い育んできた、その狭い空間が故に生じる一体感や一緒感を持続させ、さらに増幅させるように同会場の隅々にまで、そのバイタリティを行き渡らせていったのも印象深い。そう、この日は広いEX THEATER ROPPONGIまでもをしっかりとライブハウスへと化させたのだった。
「歌は無くとも歌心が溢れるバンド」の面目躍如を見たスペアザのステージ
まずはこの日の対バンであったインストバンドSPECIAL OTHERSがステージに現れる。メンバーが中心に向き合うようなお馴染みのフォーメーションから「Puzzle」が場内へと放たれていく。「歌のないバンドだけど、きっと好きになってもらえると思う」とライヴ中に挟んだMC通り、初見も多かったBRADIOのファンをガッチリ掴んでいくライヴを展開していった彼ら。名うてなプレイヤー陣から繰り出される独特のアンサンブルが、景色感やドラマや物語性を導き出していく。とはいえ、やはりBRADIOに合わせたのか?この日は躍動感を伴うファンキーでグルービーな曲たちが耳を惹いた。ブーガルーのリズムも特徴的なジャジーな「BEN」等、高揚感やピーク感を擁した独特のインスト曲たちが次々と会場を惹き込んで行っては、ゆらゆらと場内をたゆたわせていく。ラストの「AIMS」での叙情さと和な旋律、高揚感と土着性を交えたグルーヴ感で、しっかりと会場をピークまで持っていった彼ら。その様には「歌は無くとも歌心が溢れるバンド」の面目躍如を見た。
待ちわびたぜ!間違いなく今日はみんなをパーティーの向こう側に連れて行ってやる!
続いてはBRADIOだ。これまでは比較的ツアーファイナルを東京で迎えることが多かった彼らだが、今回は中盤での上京ライヴ。それが逆に今回は、途中一旦ホームに立ち寄り、そこからまた再び旅へと向かう、そんなストーリーをも想起させた。
広いステージながら、あえてライブハウスサイズのコンパクトなスペースに機材や演奏スペースを設けたこの日の彼ら。これまでの他の会場同様、あえてこのスモールなセットから会場の隅々にまで自分たちのバイタリティを伝え、広めてやる!!そんな気概が伝わってくる。
「待ちわびたぜ!間違いなく今日はみんなをパーティーの向こう側に連れて行ってやる!!」とライヴを走り出させた彼ら。頭から一体感が場内に育まれていく。いきなりのハイライトに突入したのは2曲目の「Flyers」であった。彼らの出世ナンバーとも称せる同曲が、この曲独特の上昇感とサビで訪れる天空感と共に会場に最高の景色を作り上げていく。ここでは大山聡一(G.)の長いギターソロも魅せ、真行寺貴秋(Vo.)のファルセットボイスも絶好調に会場をグイグイと深部へと惹き込んでいくのを見た。
土地土地の人たちを思い浮かべながら毎度セットリストを作ってきた今ツアー
「ファンキーでハッピー、ファンピーを届けにきたぜ!! SPECIAL OTHERSを観て心が豊かになった。(舞台袖を見ながら)もし歌が必要だったらいつでも声をかけて下さい」とはSPECIAL OTHERSに向けての真行寺の一言。「最新の俺たちを魅せに来ました!!」との場内に放った言葉を体現すべく一体感や刹那感のある曲や、ねっとりと絡みついていくスリリングさ、アダルティな雰囲気の曲たちが次々と場内へと解き放たれていく。
ここまでのツアーを振り返り、「初めての場所や久しぶりの場所も今回は多かった。その土地土地の人たちを思い浮かべながら毎度セットリストを作ってきた」と真行寺。よりウェットさを交えて切なさを与え、これもこの距離だからこそダイレクトに伝わってきた曲や、ディスコ的空間を作り出し一緒にキメのフレーズを踊ったナンバー、ファルセットを効かせた歌声も特徴的だった曲や、会場全体を巻き込み参加させた、この時期ぴったりのタオル大旋回の絶景を生んだサマーソングたちが次々と現れては場内を活気づけていく。
最新シングル曲も披露。曲毎での「ここではないどこか」への誘い
「各地での対バンライヴにて蓄えてきたパワーを出し切るから」「ここからはノープラン。完全によくわからないゾーンに突入していくのでよろしく!!」とは大山。この日は今春発売された<ファンキーなみんなにはお手上げだぜ>とばかりに4つ打ちでファンキーな「O・TE・A・GE・DA!」も会場の振りも交えて披露された。
会場とのダンスタイムを挟み、ミラーボールも回る幻想的な雰囲気の中、大山のファンキーなギターカッティングと酒井亮輔(B.)のスラップベースも効いた曲を経て、こちらも最新作品から、駆け抜けるような「バクテリアch.」と共に会場に雄々しいアンセムが響き渡っていく。そして、「皆様の熱いソウルや日常に寄り添えるように歌っているし、演奏している」との、それらの気持ちがより込められて歌われたのが新曲の「帰り道のBlues」であった。優しい安堵感をともない、暖かさと柔和さを込めてウォームに歌われた同曲。この瞬間、“一人だけど心は一人ぼっちじゃない”そんな気持ちになったのは、きっと私だけではなかったはずだ。
ツアーはまだまだ続く あなたの街でBRADIOと逢いたい
ファンな時間を与えてくれ、曲毎に「ここではないどこか」へと最後まで誘っていってくれた彼ら。このツアーはここで折り返しだが、まだまだ後半戦に向けこれからも続いていく。各地でまたこの日以上の幸せが更新されていくライヴが展開される日もあるだろう。また後半戦に向けて元気よく走り出していく勇姿とこれから彼らがツアー先各地で出会うであろうパーティーピープルとの楽しさの交歓の光景が思い浮かんでくる。
さぁ、まだまだこの全国ツアーは続く。もしかしたらあなたの街にも行くかもしれない。そんな時は是非彼らのライヴに足を運び、彼らの放つ生の歌を体感して欲しい。きっとライヴを経てみんなが会場を後にする際には、確実に入場時よりもハッピーになり、心も身体も軽くなった自身に出会えることだろう。だって、BRADIOはライヴハウスを出自に持つ、生粋のライヴエンタテインメントバンドなのだから。
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