ビルボードによる2019年上半期ストリーミング・チャートの5位に、King Gnu(キングヌー)の「白日」がチャートインした。このチャートを見ていると、上位4曲はすべてあいみょんの楽曲が占めているが、1位の「マリーゴールド」をはじめ、どれも昨年よりも前にリリースされた楽曲。「白日」は2019年にリリースされた楽曲の中ではトップだ。「白日」はなぜこれほど広く聴かれているのか、King Gnuはなぜここまでヒットしたのか? その背景を探る。
音楽ファンに知られる存在から一気にメジャーシーンへ
2019年になってから一躍脚光を浴びたバンドKing Gnu。彼らは2017年、新人の登竜門と言われるFUJI ROCK FESTIVALのルーキー・ア・ゴーゴーに出演。翌年にはメインステージとなるRED MARQUEEステージで熱演を繰り広げるなど、かねてより注目を集めていたが、この時にはまだその熱狂は音楽好きの間に留まっていた。
2018年末頃から、その存在が次第に広く世に伝わり始める。年末年始のメディアには「2019年要注目アーティスト」としてその名が頻出しており、さらにドラマの主題歌に抜擢されたことで知名度をぐんと上げた。坂口健太郎が主演を務める日本テレビのドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌として彼らは「白日」を書き下ろし、毎週そのサウンドがテレビで流れることになった。
ドラマ開始直前の1月16日には、2ndアルバム『Sympa』をリリース。King Gnuはこのアルバムでメジャーデビューも果たした。それから1カ月も経たない2月22日には、「白日」をデジタルシングルとしてリリースする。さらに同日『MUSIC STATION』にも出演し、『Sympa』のリード曲「Slumberland」を披露した。
ドラマでその音楽を聴いたり、今年注目のバンドとして存在は知っていたけれど、実際に歌う彼らの姿を見たのははじめてという人もいただろう。この曲をはじめすべての楽曲の作詞作曲を手がける常田大希(Gt,Vo)による拡声器を使ったパフォーマンスや、パペットとともに狂気的ともいえる表情で熱唱した井口理(Vo,Key)の姿は、見た人に強いインパクトを起こしたはずだ。
ストリーミングだから真価を発揮した「白日」の奥深さ
続いて、彼らのチャート成績をみてみよう。「白日」は3月4日付(2月18日~2月24日集計)でストリーミングチャートに15位で初登場した。翌週にはこの曲のMVも公開。全編モノクロでメンバーが演奏する姿を写した映像が話題を集め、翌週のチャートでは2位に急浮上した。以降は同チャートで6週連続2位をキープ。3月23日にドラマが最終回を迎えると少し落ち着いてきていたが、4月26日に『MUSIC STATION』に再び出演し「白日」を披露すると、再びチャートを上昇。5月13日付(4月29日~5月5日集計)のチャートで2位を記録し、現在まで17週連続でトップ10圏内をキープしている。最新の7月8日付(集計期間:2019年6月24日~6月30日)チャートでも、約268万回の再生で第4位だ。
その勢いは、下半期に突入した現在も継続中。ここまでのロングヒットとなっている理由には、King Gnuというバンド自体に注目が集まっていることも挙げられる。2019年要注目アーティストとして紹介され、「最近アツイバンド」の筆頭としてその存在を知った人が、バンドのストリーミングページで一番最初に表示される「白日」をまず聴く、という流れは十分に考えられるだろう。
しかし、もちろんそれだけでここまでのヒットに結びつくわけではない。購入した週しかチャートに影響を及ぼさないCDやダウンロードと違って、ストリーミングは「聴かれた回数」が評価基準。繰り返し聴かれるための強度が楽曲に備わっていなければ、これだけのロングヒットにはならなかった。
「白日」は井口の澄んだファルセットからはじまり、バンドの演奏とともに常田のラップへと繋がっていく。大切な人を失う喪失感を湛えたメロディはJ-POP的な哀愁へと接近し、一聴しただけで多くの人の心を掴む。一方で、Aメロ→Bメロ→サビというわかりやすいJ-POPの展開にとらわれない構成は、この曲を単に聴きやすいバラードとして終わらせない。ケンドリック・ラマーなどから強く影響を受けた常田のビート感覚と、それを体現する勢喜遊(Dr)、新井和輝(Ba)のリズム隊の存在も、「白日」をKing Gnuにしかできないサウンドに仕上げている。
聴いてすぐに耳を奪う聴きやすさと、バンドが追求してきたサウンドの美学。「白日」にはこの二つが同居し、楽曲の魅力に奥行きをもたらしている。それこそが、長く聴かれ続ける一番の理由であることは間違いない。
「白日」のネクストアクションに高まる期待
まだまだ「白日」の勢いは留まる気配がないが、そんな中で彼らの次のアクションも気になるところだ。「RISING SUN ROCK FESTIVAL」や「SUMMER SONIC 2019」をはじめ、夏フェスへの出演も多数決定しているKing Gnu。そのセットリストの中には、きっと「白日」も含まれているだろう。何千人、何万人の観客を前に披露されることで、楽曲の魅力はさらに広がっていく。
また、「白日」のリリースからは半年近くが経過しており、そろそろ新曲の発表も期待してしまうところ。きっと遠くないうちに訪れる新曲のドロップまで、今は「白日」を繰り返し聴きながら待ちたい。
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