『君の名は。』で日本歴代2位の興行収入記録を打ち立てた新海誠監督の最新長編アニメーション映画『天気の子』が、いよいよ7月19日(金)に全国の劇場で公開される。
本記事ではそれを記念し、世界各国のクリエイターが新海誠監督にオマージュを捧げたショート・ムービーを4本、ご紹介したい。いずれのクリエイターも新海誠監督からの影響を公言しており、監督自身が認知している作品もある。
新海誠監督のどの映画から、どのような影響を受けて作られたか、自分なりに考えながら観るのも楽しいだろう。
ロシアから愛をこめて 『愛してる』
『愛してる』
最初にご紹介するのは、ロシアのリナート・チメルカエフ監督『愛してる』(2010年)である。
新海誠監督にオマージュを捧げた映像作品としては、かなり初期のものと言える。そのため、すでに観たことのある人も多いだろう。『秒速5センチメートル』を明らかに模倣したカットや、男女のモノローグの掛け合いが、新海誠監督からの影響を色濃く感じさせる。
ちなみに8年前、新海誠監督が今ほど著名ではなかった頃、筆者はぶしつけにもメールで監督に『愛してる』をおススメし、作品の感想をいただいたことがある。要するに、監督は『愛してる』をご覧になっているということだ。
もう一つちなみに言えば、この『愛してる』には、近年、日本語字幕が付けられた。宮風耕治さんという、歴としたロシア文学翻訳家が訳されたものだ。「昔観たけど意味が分からなかった」という人も、この機会にもう一度ご覧になってみてはいかがだろうか。
ポーランドから愛をこめて 『その時、ぼくの居るべき場所』
『その時、ぼくの居るべき場所』
次にご紹介するのは、ポーランド出身のマテウシュ・ウルバノヴィチ監督『その時、ぼくの居るべき場所』(2012年)である。
背景がとにかく美しい。桜色の混じる光、エメラルドに透き通った空、電車や踏切の抒情、夕暮れに灯りだす街灯。
ウルバノヴィチ氏はこの短編アニメーションを公開して以降、大きな飛躍を遂げた。2013年、新海誠監督の所属するコミックス・ウェーブ・フィルムに入社し、まもなく大成建設のテレビCMシリーズの背景美術を手掛けると、その後も数多くの作品に参加し、ついに2016年には、歴史的大ヒットとなった長編アニメーション映画『君の名は。』の背景美術を担当するまでになったのだ。
そして2018年には、自身初となる画集『東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集』(エムディエヌコーポレーション)を刊行した。新海誠監督もTwitterで出版のお祝いをしている(2018年9月24日)。
(画像出典:Amazon)
またウルバノヴィチ氏は、やはり2018年に、カロリーメイトがスポンサーを務めた短編アニメーション『 すすめ、カロリーナ。』を監督している。同じポーランド出身で、初の外国人女流棋士カロリーナ・ステチェンスカ氏を主人公にしたプロモーションアニメで、『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)のスタジオコロリドとの共同制作だ。
いま私たちが目撃しているのは、新海誠監督の1人のファンが、みずからの技術と情熱を頼りに、新海誠監督の仲間へと変貌してゆく姿である。
イタリアから愛をこめて 『元のまま』
『元のまま』
3つ目にご紹介するのは、イタリアのマルコ・パラッチーニ監督『元のまま』(2014年)だ。
この作品は実写で、一見すると新海誠監督の映画と関わりがなさそうだが、次第に繋がりが見えてくる。第一に、男女のすれ違いというテーマ。第二に、『秒速5センチメートル』からの直接の引用。
映像が端正で、空から撮影されたイタリアの街並みも美しい。
新海誠監督はこの作品もすでに認知しており、Twitterで言及している(2014年11月20日)。筆者もこのツイートを見て本作を知った。
中国から愛をこめて 習作
『無題』
最後は、おまけ。中国のウェイ・ホン監督の無題の作品(2010年)だ。
上に紹介してきた3作品は、新海誠監督がすでに認知しているということもあり、コアなファンなら視聴済みの可能性もある。そこで、「これならほとんど誰も観ていないだろう」と思われるマイナーなオマージュ作品の中から、面白そうなものを筆者が選んでみた。
新海誠監督『雲のむこう、約束の場所』の影響が非常に強く、どう見ても習作の域を出ていないが、だからこそ興味深い点も多い。チラ見で判断せず、最後までご覧になることをおススメしたい。
以前ミーティアで、新海誠監督や、そのファンなら喜んでくれそうなミュージックビデオをまとめて紹介したことがある。ご興味のある方は、そちらも併せてお読みください。
関連情報
「『君の名は。』背景画の欧州出身画家、東京の商店を描く」
朝日新聞デジタル
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