日本文化を映した海外のミュージックビデオ(MV)を紹介
海外から日本に訪れる観光客の数が増加している。そんなニュースを最近よく耳にする人も多いだろう。日本が外からどのように見られているか、それをテーマにしたTVの特集やYouTubeチャンネルもたくさんある。
本記事では、日本を題材にした海外のミュージックビデオ(MV)をご紹介することで、同じテーマに新しい切口から迫ってみたい。
MVという窓を通して、日本を覗いてみよう。
日本人ではないけれど…『侍の娘』
まずご紹介するのが、ロシアの有名なロックバンドThe Splean(スプリーン)のMV『侍の娘』だ。
『侍の娘』
日本文化の授業なのだろうか。ロシアの学生たちが教室で習字を練習している。書いているのは「侍の娘」。そこへ日本人らしき少女が入ってくる。
しっかり掴んで 侍の娘
しっかり掴んで
端から端まで音が止む
しかし、この少女は実をいうと日本人ではない。クリスティーナ・リーという名前の中国系ロシア人のようだ。
海外の日本料理店でしばしば日本人以外の東洋人が働いているように、The SpleanのMVでも中国系ロシア人が日本人を演じているわけだ。
西洋人からすれば、彼女が実際に日本人であるかどうかは重要ではない。切れ長の目をもち、東洋風の顔立ちさえしていればよいのだ。
このMVでは、日本の伝統文化(習字)に対し、現代的でファッショナブルな少女が前面に押し出されており、日本文化の新しい側面を強調する作りになってはいる。しかし、昔から培われてきたイメージはやはり根強いらしい。
イカれたMV『アニメ、マンガ』
次にご紹介するのは、少しイカれ気味のMV『アニメ、マンガ』だ。
まずはご覧いただきたい。
『アニメ、マンガ』
歌っているのは、南アフリカ共和国のヒップホップ歌手Venim(ヴェニム)。MVには、いかにもGoogle翻訳という感じの怪しげな日本語字幕が付いている。しかし、そのことを悪びれる様子もなく、むしろ露悪的に、意図的にひけらかしている。
歌詞の内容も過激だ。『アニメ、マンガ』というタイトルこそポップなイメージを喚起するものの、実際の映像は、まるで夜中の歌舞伎町のように妖しくヒリヒリした空気に満ちている。日本の影の部分を歌っていると言えるかもしれない。
暗い『たまごっち』
3つ目にご紹介するのは、「たまごっち」を題材にしたポーランドのヒップホップ・グループTaconafideのMV『たまごっち』である。
「たまごっち」とは、1990年代に日本の中高生たちの一部で爆発的な人気を博した携帯型育成ゲームのことだ。4年前までTVアニメも放送されていたので、名前くらいなら聞いたことのある読者もいるだろう。
(画像出典:プリ画像)
だがMV『たまごっち』を制作したのは日本ではない。驚くべきことに、ポーランドなのである。
『Tamagotchi』
俺らはたまごっち世代 イェー
妙な機械が目をスキャン イェー
飛行機のなかの悲しみ イェー
(…)
飲め、食え、眠れ、たまごっちみたいにな
文字に起こすと歌詞はバカバカしく思えるかもしれないが、映像をご覧になれば分かるように、監獄が舞台のダークで陰鬱なMVである。「たまごっち」の可愛らしいイメージとのギャップが、日本人には特に敏感に感じられるだろう。
美しい『たまごっち』
最後にご紹介するのは、Ackee Tecumsehが歌う、もう一つの『たまごっち』だ。
『Tamagotchi』
こちらのMV『たまごっち』は映像が非常にスタイリッシュで、日本と思しきロケ地の景観も美しい。ダンスはキレがあり、振付もおもしろい。先鋭的な演出と伝統的な景観とがうまく融け合っている。
おそらく「たまごっち」というタイトルは、ポップカルチャーの象徴として用いられているのだろう。総じて完成度の高いMVと言える。
ちなみにこのMVは、昨2018年、60年以上の歴史があるカナダ撮影監督協会賞のミュージックビデオ部門の最終候補にノミネートされた。
(画像出典:FIND47)
以上、日本文化を題材にした4つの海外ミュージックビデオをご紹介してきた。
伝統文化、アニメ、マンガ、若者文化が、海外のクリエイターたちに影響を与えている様子が垣間見えたのではないだろうか。彼らの見つめた日本は、ステレオタイプのイメージと混じり合いながら、野心的で刺激的な表現の源泉となっているのである。
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