スペースシャワーTVが、近い将来ブレイクが期待されるニューカマーアーティストをピックアップする企画「SPACE SHOWER NEW FORCE」。選出アーティストの中から5組が出演するショーケースライブが3月5日に「渋谷WWW X」で開催された。
この日出演したのは、For Tracy Hyde、向井太一、The Wisely Brothers、iri、ドミコの5組。1000円で注目の5組が見られるという嬉しい価格帯もあってか、この日は比較的若い観客が多く、会場は溢れんばかりの人でごった返していた。
Edit_MIIM
Photo_Toyohiro Matsushima
トップバッターは「青さ」煌めく For Tracy Hyde
トップバッターとして登場したのは5ピースバンド・For Tracy Hyde。現在はソロアーティストとして活動するラブリーサマーちゃんが所属していたことでも知られるこのバンド、現在は新ボーカリスト・eurekaが加入してさらなる活躍を見せている。
バンドの「青さ」が全面に光輝く『Favourite Blue』からスタートした彼女たちのライブは、まるでスターダストの中にいるような感覚に僕らを誘い込んでくれた。シューゲイザーサウンドを取り入れたバンドは数多いるが、渋谷系を思わせるコード進行、そしてeurekaのキュートで透明感あふれる歌声は、For Tracy Hydeならではの魅力だろう。この日は、『First Regrets』、『After』など昨年12月にリリースされたばかりの1stアルバム『Film Bleu』からの楽曲が多く演奏されていた。「青春」「儚さの暴力」「日常の美化/異化」をテーマにしたこのアルバムのコンセプトが詰め込まれたようなライブパフォーマンスは「見事」の一言。まさに「NEW FORCE」なバンドと呼ばれるに相応しいステージを見せてくれた。
向井太一の「天性の歌声」
続いて登場したのは向井太一。音源ではめちゃくちゃ聴いていたが、実は筆者がライブを見るのはこの日が始めて。サウンドはもちろんのことだが、やはり彼の唯一無二の「歌声」に強烈にやられてしまった。
彼の歌声は、「宇多田ヒカル以来の天性の歌声」と呼ぶに相応しいものだろう。魅力的なエレクトロニックR&Bサウンドにまったく負けない声の太さがあることはもちろん、内臓を抉り取るようなエモーショナルさ、それと相反する神々しいくらいの優しさが感じられる歌声に観客は聴き入って、体を揺らしていた。ただバックにサウンドを流すだけでなく、生のドラムやサンプラーを取り入れたライブパフォーマンスはとても力強く、生命力に満ち溢れていた。
彼はこの日『STAY GOLD』『SLOW DOWN』などの人気曲はもちろん、少し早めの4つ打ちビートが心地良い『SPEECHLESS』、民族的なサウンドを感じさせる『SIN』など全7曲を披露。その圧倒的なパフォーマンスに演奏後は惜しみない拍手が送られた。いつの日か、数千人、数万人規模のステージでのパフォーマンスが見られることを心待ちにしたい。
遊び心もあふれる、The Wisely Brothersサウンド
3番手はThe Wisely Brothers。高校の軽音部で結成された3人組ガールズバンドだ。
「チャットモンチーをコピーしていました」と語る彼女たちのサウンドは確かにその影響を感じさせるが、ヨーロッパのおしゃれなサウンドがブレンドされ、これまでの日本ではあまりなかった見事なポップロックサウンドとして昇華されているように思えた。少しゆるめのMCも彼女たちらしく、スローな4つ打ちが果てなく続く旅路を思わせる『鉄道』、サビで激しく曲調が変わるジェットコースターのような楽曲『Thursday』などは特に楽しんで演奏を聴くことができた。最後だけ曲が3拍子になる『waltz』の「遊び心」にも思わずやられてしまった。
ラストは、彼女たちの代表曲でもある『メイプルカナダ』で締めくくり。MCでも語られていたが、どうやら3月29日に新作の『HEMMING EP』をリリースするとのこと、チェックしておきたい。
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