チップチューン・アーティストのTORIENA(トリエナ)が初となるワンマンライブ『WAKE UP!!』を渋谷Gladにて、2月25日に実施した。
2017年、活動5周年を迎えたTORIENA。液晶がビカビカに光るように改造された初代ゲームボーイ実機によるハードコアな演奏と、VJ/デザイナー/プログラマーのm7kenjiらとの共作によるコンセプチュアルなヴィジュアルの作り込みが特徴だ。
またYunomiとのコラボレーションで発表したEP『大江戸コントローラー』ではボーカリストとして表題曲の他、『惑星ラビット』など4曲を歌い上げ、その活動の幅を広げている。
図太いチップ・サウンドが鳴り響き、ステージから客席に向けてフルカラーのレーザーがぶっ放され、更にはTORIENAがストロボを振り回した(1st ワンマンライブでストロボを振り回したアーティストは、TORIENAが初ではないだろうか?)カオティックでめちゃくちゃに楽しいライブの様子をお届け!
Text & Edit_Arato Kuju
TORIENA 1stワンマンライブ『WAKE UP!!』@渋谷Glad
開場前の渋谷Gladの周辺は、15枚のみ用意されたレアな当日券を求める人と物販待機列で大盛況。
ハードコア・テクノ、チップチューンファンからMA-1に身を包んだり、髪の毛をピンクに染めたファッショニスタまで観客はとても個性豊か。TORIENA × SPINNS × VILLAGE VANGUARDとして発表された、十字キースタジャンやGBリュックといったアイテムを身に着けている女性ファンの姿も見受けられた。
中にはゲームボーイの液晶をピンクのバックライトに改造した実機を持ち込み、会場内で記念写真を撮影している方も居り、思い思いに開演を待つ姿を見ているだけでもとても楽しい!
開演時間を迎え、スクリーンにはこの日VJを担当したm7kenjiによる魔法少女の変身を連想させるアニメーションが流された。
遊び心満載の映像に続いて、ステージにTORIENAが登場!「やってくぞー!」と会場を煽り、一曲目に披露したのは『Pulse Fighter』!
ドット絵によるMVが評判を呼んだ同曲。初代ゲームボーイ実機による図太いサウンドに合わせて、オーディエンスは縦ノリで一気に湧き上がり、TORIENAは口に咥えたホイッスルを鳴らして更に会場を煽り、続けて二曲目の超アゲチューン『来来点心』、そして『Fake Bit』をプレイ。
m7kenjiによるVJプレイはドット表現をベースとしつつも、ドットにだけこだわるのではなく特に『Fake Bit』では十字キーなどをモチーフにしつつも、ビジュアルプログラミング的な視覚効果も強調されていた。ピクセルアートとジェネレーティブアートの組み合わせが実現されているかのようで、非常に興味深かった。
「1st ワンマンということで渋谷Gladさんでやっております。なんでこの日なのかというと、2月26日が京都で初めてTORIENAとしてライブをスタートした日なんですよ。(※ワンマンは2月25日のため)ニアミスだけど……(笑)。2月25日にライブをやれて、こんなに人が来てくれて嬉しいです」と語ったTORIENA。6曲目の『Kandi Pixel Z』まで立て続けにボーカル曲をパフォーマンスした。
DJブースの前に立ち、マイクを片手に歌う姿にはチップチューン・アーティストであると同時に、テクノやチップチューンという枠組みにとらわれずにより幅広く、音楽ファンに楽曲を届けようとする姿勢が感じられる。
事実、ボーカル曲のパフォーマンスの際には彼女は自身のトレードマークであるゲームボーイ実機を手にしなかった。
ゲームボーイ実機セットを披露!レーザーが(良い意味で)ヤバい
「TORIENAと言えば欠かせない、ゲームボーイ実機のセットをやろうと思います」と語り、初代ゲームボーイの電源をTORIENAが入れるとピコーンというゲームボーイおなじみの起動音が渋谷Gladに響く。
「(ゲームボーイでは)直感で作ることが多くて。実機で作るときは、ウケを狙ってないんですよね。無意識のままに曲を作っていく。無意識にこそ、人間の本質が出るというか」と述べた彼女。
『SPACE FUGITIVES』収録『Reloading…』、『A.I. COMPLEX』収録『Sweet Delusion』などゲームボーイ実機オンリー、これぞチップチューン!これぞテクノ!というハードコアなパフォーマンスが続く。とにかく曲間の繋ぎがスムーズで美しく、DJとしての真髄もまた見せつけられた。
ボーカル曲中心のセットが「表」であるとするなら、実機セットは「裏」といったところだろうか。直感に突き動かされるように、ゲームボーイを手に激しく動きまくる彼女。
『Kandi Pixel Z』でポップな空気に包まれた会場が、一気に24時を回ったクラブに変貌したかのようだった。
1st アルバム『Black Dance Hall』からは『Get out of the earth with you』が選曲された。同曲はTORIENAの活動初期からの代表曲の一つでもあり、ファンにとってはたまらないチョイスだったであろう。
圧巻だったのはhuezによるレーザー演出だ。
TORIENAがゲームボーイの液晶をオーディエンスに見せつけるように後方を向いて実機を操作すると、その動きに合わせてステージからレーザーがぶっ放される。
レーザーは曲によっては虹色に変化、直線状だけでなく平面状にも形が変わり、『R-G-B-I-T』ではレッド、グリーン、ブルーのレーザーが観客席を貫いた。この頃には重低音のトラックに合わせて頭をガンガンに振り、ちょっと普通じゃないテンションに突入した客が続出していた。
『大江戸コントローラー』で会場が一つに。
ゲームボーイ実機のコーナーが終わると、ステージにはYunomiが登場。彼の手の中には、Yunomiファンにはおなじみのペン助の姿も。会場からは「かわいい!」とペン助に黄色い声援が飛ぶ。いちおう知らない人のために説明しておくとペン助はYunomiの化身(?)である、ペンギンのぬいぐるみだ。
ペン助をDJブースにしっかりとセットすると、TORIENAとYunomiの4曲に及ぶコラボパフォーマンスがスタート!
『大江戸コントローラー』のイントロが流れ出すと、客席からは大歓声が上がった。「大江戸コントローラー」という台詞の箇所では、TORIENAが客席にマイクを向けた。
ファンの間ではすっかりアンセムと化した『大江戸コントローラー』。
客席では肩を組んで踊り出す人から、まるで合唱曲のように大きく口を開けて歌う人まで十人十色。曲間のブレイクではYunomiとTORIENAがダンスを披露、Yunomiが担いだサンプラーのボタンをTORIENAがいじる一幕もあり多幸感たっぷりだった。
多幸感が溢れすぎたためか、『大江戸コントローラー』のパフォーマンスが終わりステージの脇へと引き上げたYunomiがブースにペン助を置き忘れていくというハプニングも。
客席からは「ペン助――――!」と置き去りにされたペン助を心配する声があがり、会場は笑い声に包まれた。
ぐるんぐるんに振り回されるストロボ!初のワンマンは大成功
TORIENAは続けて新曲の『SUIPARA』、『コードネームはEQ』、『POP NEGA POP』を披露。
『コードネームはEQ』では、ステージ後方のストロボをぐるんぐるんに振り回してみせた。
最後の一曲を前に「5年目ということで、私はここ(※初のワンマンライブ)を節目というか、大事なスタート地点にしたいです」とMCで語り、2012年にチップチューンを始めた当初のことを振り返ったTORIENA。
チップチューン、テクノの枠に留まらず、常に活動の範囲を広げてきた彼女だが「変わるのが怖かったんです」と述べた。
「(他者によって、自分のイメージが)コーティングされていくじゃないですか。その中で芯にあるもの(※チップチューンへの愛情)が伝わらなくなっちゃったらどうしようと思って。でも、上京したんですよ。そしたら吹っ切れて」
そして、「変化って、進化じゃないですか。変わらないで、進化するのは有り得ないですよね」と言い、今後の飛躍をファンに対して誓い『Life is a game』を歌い上げた。
キラーチューンを次々繰り出しストロボを振り回し、レーザーが飛び交い、VJもキレキレだったTORIENAの初のワンマンライブ。
TORIENAの2017年はまだまだ始まったばかり。5周年を迎えた彼女の今後の活動に、期待は高まるばかりだ。
TORIENA 1st ワンマンライブ『WAKE UP!!』セットリスト
SE. UPDATE (short ver.)
M1. Pulse Fighter
M2. 来来点心
M3. Fake Bit
M4. Chip Brain Girl
M5. ピコラセテ (short ver.)
M6. Kandi Pixel Z
M7.Reloading…
M8. Sweet Delusion
M9. Get out of the earth with you
M10. 4D RAVE ON
M11. R-G-B-I-T
M12. 惑星ラビット
M13. バンブーディスコ
M14. さよならインベーダー
M15. 大江戸コントローラー
M16. SUIPARA(新曲)
M17. コードネームはEQ
M18. POP NEGA POP
M19. Life is a game
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