昨年10月から、全国15箇所を巡ってきたLenny code fiction “Montage”ツアー。ファイナル公演が、2月2日、渋谷クアトロで行われた。各所で最高到達点を更新してきた本ツアーの締めくくりにふさわしく、『Montage』収録曲に加えて、これまでリリースしてきた楽曲をふんだんに交えた100分間。大きな節目となったステージで、彼らはどのような音を鳴らし、何を語ったのか。
Photography_Yusuke Satou
Text_ Kenta Baba
爆音の世界へ。
この勢いでいくとツアーファイナルはとんでもないことになるのでは、と前回のレポートを締めくくっていたのだが、ライブがはじまって数十秒間でその予感が的中したことを確信した。
何よりもフロアの熱気が何倍も増していて、1曲目の「Montage(SE)」はドラム、ベース、ギターがそれぞれ音を重ねていくのだが、KANDAI(Dr.)が1音目を発するさらに前のところから熱い手拍子が鳴り響いた。
ライブのはじまりはKANDAI(Dr.)から。
そりゃ手拍子ぐらいするでしょうよ、と思うかも知れないが、音色?暖かさ?がスタンディングオベーションのときのそれだった。このときをいかに待ちわびたか、アルバム『Montage』と今回のツアーがいかに心を揺さぶってきたのかがスタート時の空気感で示されていた。
「きたぜツアーファイナル!」
Vo.片桐航が登場し、ステージ上の4人も最高潮の熱気で応える。「Snatch」「KISS」「Enter the Void」と爆音の世界に連れ去るためのライブ人気曲を連投。音圧もグルーヴも3ヶ月前の同ツアーでのパフォーマンスからさらに厚さを増している。なかでも特筆すべきは「Enter the Void」。イントロから大きくフロアが揺れた。この曲の真骨頂を目の当たりにすることができた。
kazu(Ba.)のベースも序盤から際立っていた。「Enter the void」冒頭のリフがかっこよすぎた。
「ただただ、爆音の中にいるのが好きだった」(片桐 航インタビューより)
嵐のように過ぎ去ったはじめの4曲。ここでは言葉はいらなかった。言葉が脳内から消えていた。片桐 航(Vo.)が地元滋賀のライブハウスでステージに立ち始めたときに感じていた爆音の心地よさを追体験しているようだった。
いつでも、逆転できる。
「いつだって逆転できる。そんな曲を」
その言葉と同時にはじまったのは、MVが再生回数150万回を突破した代表曲のひとつ「Make my story」。滋賀から上京し、メジャーデビューを果たし、1stアルバムのリリース。そしてツアー。順風満帆のように見えるが、その歩みは決して早い方ではなかった。「Make my story」リリース時のインタビューでは、思うようなライブができない日もあったと語っていた。
メンバー全員が華のあるプレイスタイルで、ソラ(Gt.)はその筆頭。激しいときもメロウなときも絵になる。
「滋賀のマジのど田舎でひとりで曲をつくりはじめて、
そのうちポンコツリーダー(ベースでリーダーのkazu)と出会って、
守山ブルーってスタジオに入って。SEIYUで安売りの弁当買って。
クソ安い弁当を、おいしいなぁって言いながら食べて
いつかでかいことやりたいなーって言い合ってました」
曲前に語られたこのエピソードは、どこか牧歌的でもあるけど、きっとずっと悔しかった時期だ。高校を卒業して、周りは就職していく中、バイトと音楽に打ち込む日々。
そんな彼らの逆転は「Make my story」を作り上げたことで大きく加速した。渋谷クアトロでツアーファイナル、というのも大きな到達点であるが、「自分の正解は自分で見つけるものだ」との考えにたどり着いてから、何かが吹っ切れた印象がある。
なにもかも終わってしまうけれど、なにもかも忘れたくない。
ツアーファイナルでは、1曲ずつの間を十分にとり、ひとつひとつ噛みしめるように演奏しているのが印象的だった。静と動を行き来して、ショートフィルムのように、はたまた短編集のように、さまざまな世界や感情を見せてくれる。
「がんばれ!とはいえへんから、じっくり、後ろから、支えていきたいと思っています」
『Montage』の主役は、自分たちではなく聴いてくれるあなたたちだ、ということを片桐 航はツアー開始時から繰り返し強調していた。後半に入って披露された「影になる」や「世界について」はアルバム収録曲ではなくそれより以前にリリースしたシングルのカップリング曲なのだが、彼らの在り方を存分に示していた。
「ツアーファイナルということで、特別な曲を一曲」
そう続けてはじまったのは、まだ音源化されていない「Once」。
サビのフレーズ「なにもかも終わるけど、なにもかも忘れたくない」は
ツアーファイナルという”終わり”に際して、これ以上ないほど的確な言葉だった。
さらに「Once」を聴きながら震えたのが、この曲が、今を生きているこの瞬間は二度と戻らないこと、つまり「今」を肯定する歌だったことだ。
というのも、『Montage』は人ひとりが持ついろんな顔や感情すべてを肯定するアルバムだったのだが、「影になる」も「世界について」も「Once」も、世界や、存在そのものや、瞬間に対する肯定を歌っていたのだ。
なんのための爆音か。
名物のメンバーMC(めちゃめちゃ面白かったので詳しく語りたいものの長くなりそうなので今回は割愛します…)を経て、ライブは終盤へ。
「Showtime!!!!」「Alabama」「Rebellious」「Vale tudo【MAKE MY DAY】」とアップテンポの曲を立て続けに披露し、再びフロアは大揺れ。ここで再び爆音と圧巻のパフォーマンスにより思考が吹き飛ぶのだが、余計なことを考えなくなった分、言葉がぐんぐんと心に染み渡る。
なんのための爆音か。なんのためのロックミュージックか。以前インタビューで片桐 航が「自分が惚れ込んだ音楽は、ただかっこいいだけじゃなくて、言葉で心を動かすもの」と語っていたことを思い出した。こういうことだったのか、と腑に落ちる。余計な考えを吹き飛ばした分だけ、言葉が心に入ってくる。大事なことや、本来の自分を思い出すことができた。
先へ進むほど、風にのっていく。
ラスト2曲を前にした最後のMCで、片桐はこう締めくくった。
「ファイナル終わるの寂しいって言ったけど撤回させてください。
いい曲。いっぱいできてます。
いいライブ、決まってます。
やりたいことが、どんどん出てきてます。
名古屋、福岡、大阪
どれもいいライブすぎて超えれんとおもってたけど
超えてきてます。
すごいクサい言い方やけど
この先、希望しかないです。
見ててください。
今年、最強の曲書いたるから。
これから先俺らが
どれだけ先へ行くか
見ててください」
この日のライブをみた人全員が、希望を言葉だけでなく表情や音から感じとったと思う。「先へ進むほど風に乗って」ゆくLenny code fictionの逆転は、これからまだはじまったばかりだ。
<LIVE TOUR 2018-2019 Montage>2月2日@渋谷クアトロセットリスト
01. Montage (SE)
02. Snatch
03. KISS
04. Enter the Void
05. Make my story
06. Ruby’s day
07. オリオン
08. Key -bring it on, my Destiny-
09. Colors
10. 欲を纏う
11. 影になる
12. オーロラ
13. 世界について
14. Once
15. Showtime!!!!
16. Alabama
17. Rebellious
18. Vale tudo【MAKE MY DAY】
19. Flower
20. Twice
SHARE
Written by