ラップはみんなが思ってる以上に面白い
ーーUMBの司会をやるようになったことが創作活動にも変化を与えたんですね。今年1月にリリースした『DIS IS RESPECT』というアルバムは、「初期衝動」に代表されるように原点回帰的な色が濃い作品だと思いました。
MCニガリとか「高校生ラップ選手権」出身のラッパーが出てきてチャンスを掴みまくってるのを見て、自分が高校生のときとは形は違えど、初期衝動を思い出したんですよね。
ーーなるほど。では、作品全体としてはどんな思いで取り組んだんですか?
音のクオリティとして、昔の日本語ラップに負けたくなかったし、最近のJ-POPとかワールドミュージックにも負けたくなかった。ブンブンに音を鳴らしたぶっとい物を作りたかったし、それでいて音質も良くてキレイに聴けるようなものを……ちゃんと音楽として聴かせたかったんですよね。かなり丁寧に作りました。
ーーリリックにしてもトラックにしても90年代の匂いをさせる楽曲が多くて、日本のヒップホップの歴史を総括しているような印象を受けました。
そうかもしれないですね。最近、レコードを聴く機会が増えたんですけど、昔の日本語ラップは今のよりも格好良いんですよ。ヒップホップを広めようとしてるのが伝わってくる。最近の日本語ラップはヒップホップを広めたいのか広めたくないのか分からないじゃないですか。俺は広めたいんですよ。まだまだ全然広まってないから。
ーーでも最近、これまでヒップホップに全く触れてこなかったような人たちがラップに興味を持ち始めてますよね? 昔はヒップホップ好きだっていうと「あれだろ? チェケラッチョだろ?」って馬鹿にされまくりましたけど、今は違いませんか?
フリースタイルはびっくりするみたいですね。「本当にその場でやってるんだね!」って。ラップのすごさを分かってもらうにはフリースタイルが一番便利ですね。
ーー90年代に「証言」という1曲が多くの若者に衝撃を与えたように、今はフリースタイルという手法自体が強い影響を与えてる気がします。
ラップはみんなが思ってる以上に面白いし、敷居の低いものなんだっていうことを分かって欲しいです。「サッカーやろうぜ」っていうのと同じ気軽さで「サイファーしようぜ」ってなったらうれしいですね。
ーーそういう風になってきてる実感はないですか?
ありますね。俺の友達の子どもで小4の子がいるんですけど、ラップするんですよ!
ーーそれは確実に裾野が広がってるじゃないですか! 今までってDragon Ashのヒップホップソングが何十万枚売れようが結局は飛び道具止まりだったり、ヒップホップがカルチャーとして育たない状態が続いてたと思うんですけど、ここ数年、「高校生ラップ選手権」が始まってからかなり状況に変化が現れたと思います。
僕もあれが一番でかいと思います。
ーー1990年に「ダンス甲子園」が始まったのをきっかけにダンスが一気に流行ったのと同じような現象が起こってると思うんですよね。
ダンスもみんなで一緒に楽しむものじゃないですか。ラップも本質はそうだと思うんですよね。アメリカの高校でもランチタイムにバトルしてって話をよく聞くじゃないですか。
ーー『DIS IS RESPECT』に収録されている「ラップゴッコ」にある、「ゲットーから一般ピーポー ラップしたら誰でもヒーロー」っていう一節がすごく感慨深くて。今じゃないとリアリティがないリリックですよね。
ああ、そうかもしれない。自然に書いたものですけど、たしかに一昔前だったら言わなかったことかもしれないですね。悪いやつでもそうじゃなくてもなんでもいいんですよ。金持ちには金持ちの苦労があるだろうし、そういう思いを表現するのにヒップホップは武器にしやすい。
ーー今、UMBの司会として全国を回ったり、ラップを教えたり、テレビに出たりして、下の世代を育てる立場になりつつも、その一方で「フリースタイルダンジョン」の審査員を外れてチャレンジャーの立場に戻ったりもしています。晋平太さんとしては今、どういうスタンスでいるんでしょうか?
単純にチャンピオンよりも俺のほうが強くありたいと思ってるし、新たな天才が出てきた時に戦ってみたい自分もいる。そのためには自分もずっとラップをしていないとダメなんですよ。一番やべぇと言われてるヤツには勝ちたい。
ーーなるほど。人によってはテレビに出たり、UMBで司会をしてる晋平太さんの姿を見て、「あいつ、もうバトルやる気ねぇのか。日和(ひよ)ったな」とか言う人もいるんじゃないかと思ったんですけど。
そう思うんだったらかかって来い、ですね(笑)。
晋平太
MC。1983年東京都生まれ、埼玉県狭山市育ち。
フリースタイルでのMCバトルを得意とし、2005年『B-BOY PARK MC BATTLE』での優勝で注目を浴びる。2010年、2011年には日本最大規模のMCバトル『ULTIMATE MC BATTLE』(以下、『UMB』)にて史上初の二連覇を成し遂げて、他にも『戦極MC BATTLE』の初代(2012年)及び第10章(2014年)のチャンピオンに輝くなど、数多くのMCバトルにて輝かしい戦歴を残してきた。
2004年リリースの1stアルバム『SHOW ME LOVE』を皮切りに、これまで(2016年現在)4枚のフルアルバムと2枚のミニアルバム、さらにシングルやベスト盤、ミックスCD、DVDなど多数の作品を発表。MCバトルのアンセムとも言えるシングル「CHECK YOUR MIC」など、数々の名曲を残してきた。2013年からは『UMB』の総合司会者として全国各地の大会のステージにも立ち、さらにadidas OriginalsやRed Bullなどが主催するイベントでもMCを務める。
また、これまで『さんま岡村の日本人なら選びたくなる二択ベスト50!SP!』(日本テレビ)、『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)、『初めて〇〇やってみた』(テレビ朝日)、『ジュニアの鼓膜』(スペースシャワーTV)といったテレビ番組にも多数出演。2015年9月よりスタートした『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)ではMCバトルの審査員を務める。
フリースタイルの伝道師として、全国各地でラップ講座を開き、フリースタイル及び日本語ラップの普及活動を行なっている。座右の銘は“Do My Best”。生涯現役を目指す、日本一のフリースタイル馬鹿である。
晋平太 オフィシャルサイト
ニューアルバム『DIS IS RESPECT』
2016年2月6日発売
UMBCD-006 / 2,700円(税込)
[ 収録楽曲 ]
1. はじめの一歩 / produced by DJ TAIKI
2. FREE STYLE MIND / produced by DJ CELORY aka MR.BEATS
3. CHECK YOUR MIC / produced by DJ CELORY aka MR.BEATS scratched by DJ SHOW
4. 末期症状 2015 feat R-指定(Creepy Nuts) / produced by DJ TAIKI
5.ラップゴッコ / produced by SHIGE from BUZZERBEATS
6. 世間知らず feat J-REXXX / produced by BooKEY
7. ペーパートレイル feat R-指定(Creepy Nuts) / produced by DJ 松永(Creepy Nuts)
8. NJ〜ナゾノジシン〜 feat MR Q from RAPPAGARIYA & 呂布カルマ / produced by DJ YUTAKA
9. NOMAN NOPERFECT feat SHINO / produced by SHIGE from BUZZER BEATS
10. 初期衝動 / produced by DJ TAIKI
11. 思えば遠くへ来たもんだ / produced by SHIMI from BUZZERBEATS
12. 365×10 / produced by MICHITA
超ライブ×戦極 U-22 MC BATTLE presented by Dreamusic
●東京公演
開催日:8月2日(火)OPEN 14:00 / START 15:00
会場:TSUTAYA O-EAST
-LIVE ARTIST-
般若 / NORIKIYO / KEN THE 390 / 晋平太 / DOTAMA / CHICO CARLITO / BAD HOP / ACE / RUDE-α / WillyWonka aka TAKA / MAGiC BOYZ …and more
-U-22 MC BATTLE- 合計32名(シード16名+予選勝ち抜き16名)
シードMC第1陣:Rude-α(沖縄)-琉球ファンク- / MIRI(東京)-今戦えるアイドル- / Lick-G(逗子)-新世代のハイブリット- / Luiz(杉並)-褐色の英才教育- / SAM(栃木)-北関東NO1 Rhymepass- / MAKA(栃木)-真っ赤なdeejay-
-BATTLE審査員-
Hidaddy / サイプレス上野 / KEN THE 390 / DOTAMA ほか1名
-エキシビジョンMC BATTLE-
新世代最強リベンジマッチ(賞金10万争奪マッチ)
CHICO CARLITO vs T-Pablow
-DJ-
YANATAKE / DJ TIGU
●大阪公演
開催日:8月14日(日)OPEN 14:00 / START 15:00
会場:CLUB JOULE
-LIVE ARTIST-
KEN THE 390 / 晋平太 / 呂布カルマ / KOPERU&ISSEI / ACE / MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻 / 言xTHEANSWER …and more
-U-22 MC BATTLE-合計32名(シード16名&予選勝ち抜き16名)
シードMC第1陣:MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻(長野)-真性ラップバカ一代- / じょう(大阪)-静かなる韻ファイター- / R’kuma(沖縄)-極東のジャックナイフ- / K-razy(大阪)-関西New Wave- / ミステリオ(大阪)-浪花節曲者スタイル- / MCfrog(大阪)-ミスストイック-
-BATTLE審査員-
UZIthe9mm / KEN THE 390 / 呂布カルマ / Hidady ほか1名
-DJ-
PEKO / HAMAYA
-エキシビジョンMC BATTLE-
現役最強決定戦(賞金10万争奪マッチ)
呂布カルマvs 晋平太
●U-22MCバトル予選
東京予選:8月1日(月)渋谷FAMILY / 大阪予選 8月13日(土)心斎橋CLUB JOULE
予選エントリーURL:https://fs224.formasp.jp/y866/form16/
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